南国新聞 2013年8月8日

 東西貿易の拠点として1780年代から栄えたペナン島。その中心部ジョージタウンは古い街らしい温かな人情と、世界に開かれた貿易港らしい自由闊達な気風が今も残る魅力的な街だ。

サスペンドされた食事などが掲示されている黒板

 そんなジョージタウンの静かな通り、ラブレーン(Love Lane)の一角にある「Behind 50」と「クワンセンハウス(Kwong Sang House)」は、共にレトロチックな優しい時間が流れ心安らぐ空間が広がるカフェ&レストランだ。

 3人の若いオーナーたち。アイザックさんはウェディングプランナー所属のフォトグラファー、ギムさんはある会社の営業主任、そしてリディアさんはペットショップのオーナーが本業。レストランのオーナーはまだサイドビジネスの段階だ。

 古い街並みに人々の絆が集まる温かい場所づくりを目指してきた3人は、優しい人情味が残る街なのに、あるいはそれだからこそか、街にホームレスの人たちが少なくないことに心を痛めてきた。

 そして今年4月から善意の輪を通りにも広げ、お店のお客が置いていく料理代で用意した食事をホームレスの人々に届ける「サスペンデド・ミール(Suspended Meal)」を始めた。

 「サスペンデド・ミール」のシステムは簡単で、お店で食事を済ませた後のお会計でその旨を告げて一口12リンギをスタッフにあずけて氏名や連絡先を記載するだけ。集まった食事はお店の玄関の黒板に記録され、何食分の善意が集まったのかひと目で分かる仕組みだ。

食事を受け取ったフードコートに寝泊まりしている華人男性

 6月末の週末までに届けられた食事は合計で約140食。同じく6月末で受け取った料理代は約400食あまりに達した。毎週、活動に賛同して料金を置いていく人は約50人程度になった。

 乗用車や自転車で、3人とレストランスタッフ、そしてお店の常連客などのボランティアなど4人から6人のチームが、ジョージタウン各地を回り食事を宅配している。

 現在のところ、ボランティアはジョージタウン地元の人たちがほとんどだが、外国人の参加ももちろん歓迎。温かい善意の輪が広がり、街と地域社会を大切にする気持ちが広がっていくことを3人は期待している。

 温かな人情が残る古い街に育てられたお店から始まった小さな善意は着実に広がっている。ジョージタウンの旧市街を訪問したら、「Behind50」と「クワンセンハウス」で食事をして、優しい街の善意の輪に連なってみてはいかがだろう。(Mitsuyuki Horii)

Behind 50
Love Lane,Muntri Street 10200 Pinang Georgetown Pulau Pinang
営業時間: 午後6時~午前1時 木曜休業
Tel:60125565509 /60124939230

Kwong Sang House
36, Leith Street, 10220 Pinang Georgetown Pulau Pinang
営業時間 : 正午~午後11時 木曜休業
Tel : 6012-5565509

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