南国新聞 2013年8月8日

 タイ国境に近いマレーシア北部ペルリス州ブキ・カユヒタム税関で7月21日午後7時、絶滅の危機に瀕している希少動物センザンコウ49頭をタイに密輸しようとしたタイ人タクシードライバーが逮捕された。

 税関・警察の調べでは、57歳のこのタクシードライバーは国際密輸シンジケートに雇われた者と判明している。

 男はタクシーのトランクの中に生きている49頭を隠し、税関検査をくぐり抜けようとした。シンジケートは、総額5万リンギ(約150万円)相当のこれらのセンザンコウをタイ経由で中国に密輸する手はずを整えていたらしい。

 センザンコウの肉は、タイ市場では1キロ当たり350リンギ。中国に持ち込めば、それ以上に高く売れ、シンジケートは大きく儲けることができるという。

 センザンコウはアリクイに似た有鱗目のほ乳類で、歯を持たず、シロアリなどを食べるため、害虫駆除の役割を果たしている。中国では、古くからセンザンコウの肉を食用とする習慣があるほか、うろこなどが漢方薬として用いられている。

 センザンコウ(穿山甲、Pangolin)のサイズは、小さいものではオナガセンザンコウが体長30-35cm、尾長55-65cm、体重1.2-2.0kgほどしかないのに対して、最も大きいオオセンザンコウでは、体長75-85cm、尾長65-80cm、体重25-33kgほどもある。マレーシアに生息するセンザンコウはマレーセンザンコウだ。

 需要が増加傾向にある中、中国内に生息するセンザンコウが乱獲で激減しているため、ワシントン条約で国際取引が規制されているものの、シンジケートはそんなことはおかまいなしとばかりに、インドネシアとマレーシアで捕獲されたセンザンコウを中国に密輸して荒稼ぎしている。

増えるセンザンコウの密輸

 食用・漢方薬として中国とベトナムで需要増というセンザンコウの密輸がマレーシアでも増えている。

 マレーシア野生動物&公園局(Perhilitan) によると、2010年以降これまでにマレーシア国内で摘発された密輸事件は50件、保護されたセンザンコウは約1500頭にのぼっている。

 同局取締課のアブドル・カディル・アブ主任が英字紙ザ・スターに語ったところによると、インドネシアで捕獲されたセンザンコウをマレーシア経由でタイ、ラオスなどを経てベトナム、中国に密輸するシンジケートが多いという。

 「マレーシアは密輸の経由地で、保護されるセンザンコウはインドネシアで捕獲されたものがほとんどだ。道路網が整備されている関係で、シンジケートは車両を使い、マレーシアからタイにセンザンコウを密輸している」とアブドル主任は最近の事情を説明した。

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