今年の夏は暑かった。関東地方では、7月下旬から8月下旬まで、ほぼ丸1カ月間猛暑が続き、まったくやり切れなかった。おまけに、雨が降ったと思えば「ゲリラ豪雨」である。「これまでに経験したことのない」集中豪雨による被害も列島の各地で起きていて、「丁度いいおしめり」などという言葉は、天気予報士の口からついぞ聞かれなかった。

 そんな夏もようやく過ぎようとしていて、夜は虫の声が聞こえてくる。人心地つくとはこのことで、秋の訪れに感謝しつつ、夏の出来事を綴ってみたい。

                ★     ★     ★     ★

 我々が暮らす埼玉県志木市では、7月20日と21日の土日に敷島神社の夏祭りがあった。どちらの日も涼しい風が吹き、町内会の子ども神輿に付き添っていても大して汗をかかず、「今年の夏は、実に楽だ」と、私は高をくくっていた。

 それが、翌日の月曜日になると一転して猛烈な暑さになった。あとは来る日も来る日も最高気温が35度を超える真夏日で、夜になっても30度を下回らない。一本調子の暑さが身体にこたえて、どうにかして涼を取りたいと思っていたところに近所の花屋さんで朝顔の鉢を見つけた。4本の支柱に輪をかけた円筒形の垣に、朝顔の蔓が巻き付いているという、お馴染みの代物である。

 ところが、葉は茂っているのに蕾がまるで付いていない。

 「陽に当てれば、どんどん蕾が出て、花が咲きますから」

 顔馴染みの店員さんの言葉を信じて、私は生まれて初めて朝顔の鉢を買った。家に戻り、ジョウロで水をやっていると、妻の母が母屋の縁側から庭に降りてきた。

 「あら、朝顔ね」

 「毎朝、花が咲いたら楽しいと思いまして」

 それから、私は小まめに水をやった。おかげで蔓がぐいぐい伸びて、すぐに垣の丈が足りなくなった。

 「もう少し大きな鉢に植え替えた方がいいわね」