2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」は、小惑星「イトカワ」へ着陸した後2010年に地球へ帰還し、人類初の月以外の天体着陸という快挙を成し遂げた。
世界に冠たる日本の宇宙開発、だがその裏では・・・
2007年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや(SELENE)」の活動、日本人宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)における活躍、2009年の無人輸送機「HTV」の打ち上げ成功など、日本の宇宙技術開発は世界に冠たるものがある。
しかし安全保障の観点から考察すると、日本の航空宇宙政策には暗雲が漂っているのである。
日本は世界で4番目に人工衛星を打ち上げた、いわば宇宙先進国であったが、今や宇宙政策の混迷によりヨーロッパのみならず中国やインドにも後れを取っている。
欧州連合(EU)はガリレオ計画推進(Galileo initiatives)、中国は有人衛星「神舟5号」の打ち上げと地球軌道上の衛星破壊実験の成功、中国とインドは商業衛星打ち上げ構想と宇宙ビジネスの拡大戦略など、米ロ両国以外のいわば宇宙後発国による宇宙開発と利用が大きく進展している。
2010年5月に韓国航空宇宙法学会(KASL)と国立韓国航空宇宙大学校が共催した国際シンポジウムがあり、これに引き続いて、北京で国際宇宙連盟(IAF)と中国宇宙学会(CSA)が共催した世界月球大会(Global Luna Conference、GLC)が開催された。
航空と宇宙技術開発に力を入れる中国と韓国
GLCは26カ国から法政策と技術の専門家が460人参加した。中国と韓国は航空と宇宙に関する法政策および技術開発に強い関心を持っており、国際シンポジウムへの積極的な支援政策を継続している。
航空宇宙技術開発と航空宇宙産業の育成が、両国の安全保障にとって必須のことと認識しているからである。
日本は安全保障の観点から航空宇宙政策を転換し、これまで蓄積してきた基礎的な航空宇宙技術開発の成果を活用し、航空宇宙技術開発と人的資源の確保とともに航空宇宙産業の育成を図ることが要請されていると言えよう。
1.宇宙開発と軍事衛星
宇宙技術の開発は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発と不可分の関係にある。
地球軌道上への人工衛星の打ち上げはICBMの推進力と操作性(maneuver)技術の証明となり、打ち上げ技術の優位性は潜在敵国に対してICBMの精度と核ミサイル技術の優位性を認識させることになるのである。