2010年6月18日、菅直人首相と経済3団体トップとの初顔合わせが実現した。政府の成長戦略を中心にした意見交換という触れ込みだったが、その内実はお寒い限り。官民トップ会談の中身を詳報する。
鳩山政権期の「没交渉」からは一転
梅雨曇りの午前8時45分、首相官邸に一番乗りしたのは経済同友会の事務方だった。続いて岡村正日本商工会議所会頭、桜井正光経済同友会代表幹事、米倉弘昌日本経団連会長が次々と黒塗りの車から降り立ち、控室へと消えていった。
民主党に政権交代後、官邸に初めて足を踏み入れたという日本経団連の幹部は「いや、様変わりですよ」と感慨深げだ。鳩山政権時代は海外視察の報告や経済界の政策要望を聞いてほしいと官邸サイドに再三、申し入れても「来ないで結構。話を聞きたい時に呼ぶ」とけんもほろろに断られるのが常だったというから無理もない。
こじんまりした追応接室には米倉氏、岡村氏、桜井氏の3人と仙谷由人内閣官房長官、直嶋正行経産相、古川元久内閣官房副長官らが報道カメラを意識してか部屋の入り口に向かって半円を描くように着席。少し遅れて菅首相が入室すると経済団体3トップは一斉に立ち上がった。米倉氏が歩み寄って「新内閣の発足、誠におめでとうございます」と呼びかけると、菅首相は「わざわざご足労いただきまして恐縮です」と応じ、カメラのフラッシュを浴びて握手を交わした。
午前9時15分、民主党政権発足後初めての官民トップによる意見交換は定刻に始まった。
微妙にかみ合わないやり取り
菅: 政府の成長戦略は発表した通りです。併せて税制改革にも取り組み財政を健全化して「強い経済、強い財政、強い社会保障」の実現に一体的に取り組みたいと思っています。
米倉: 消費税の税率引き上げに言及されたのには驚きました。よく決心されましたね。
菅: マニフェストにも盛り込んで参院選を戦います。経済界が動き、それを政府が制度面でバックアップする。そういう形がうまく作っていければいいと思います。