2013年5月31日、ベラルーシの首都ミンスクで開かれたCIS首相会議において、ウクライナのアザロフ首相は、ユーラシア関税同盟経済委員会との間で、「ウクライナ・ユーラシア経済委員会間の相互関係深化に関するメモランダム」に調印した。
本メモランダムは、ウクライナにオブザーバー資格で関税同盟のすべての作業部会の会議に参加する道を開くものだ。しかし、「EU(欧州連合)を捨ててロシアに回帰か」と見なすのは早計である。
事実、翌6月に開かれた中欧諸国サミットで、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領は、ウクライナの地政学的位置、経済的妥当性、そしてウクライナ人が持つヨーロッパ意識からヨーロッパ統合政策を正当化し、改めてEUとの連合協定調印に熱意を示すなど、そのEU加盟路線は揺らいでいない。
ロシアのアメとムチ
しかしながら、ウクライナにとって、ユーラシア関税同盟の加盟はメリットがないわけではない。ウクライナの対外貿易は依然として、対CIS諸国が対EUを大きく上回っているからだ。
ウクライナの対EU貿易は加盟国の増加に伴って漸増しているものの、いまだにロシア1国に対する貿易額と同じ程度しかない。EUとの連合協定をテコに、ヨーロッパ諸国との貿易を深めようとウクライナ政府が焦るのも道理である。
(表1)CIS諸国、ロシア、EUのウクライナ貿易に占める割合(2012年)
* 輸出 輸入
対CIS(10カ国) 37% 41%
対ユーラシア経済同盟3カ国 33% 40%
対ロシア 26% 32%
対EU諸国 25% 33%
(出所)ウクライナ国家統計委員会
また、ユーラシア関税同盟の加盟に際してロシア政府が提案しているとされるガス価格の値下げも見逃せない。ウクライナ加盟の暁には、ベラルーシ水準(1000m3当たり165ドル)までガス価格が値下げされるという見方まである。