今回は、大学というものに呼ばれて14年ほど経った私にとって、人生の「初心」に戻るような内容、その告知からさせていただければと思います。

 6月20日、東京大学本郷キャンパスで、この大学に来て初めて、実際の演奏を含むプログラムでの公開講座を行う運びとなりました。

東京大学応用倫理教育プログラム
「応用倫理研究3」「生命をめぐる科学と倫理」第3回演習
「歌(うた)う・語(かた)る・理(ことわ)る――生命の伝達と倫理」

竹内整一先生(倫理学、鎌倉女子大学)+伊東乾(指揮・作曲)
日時 6月20日(木) 16:40~19:30
場所
東京大学本郷キャンパス法文1号館215教室

入場料・事前申し込みなどは一切必要ありません。

 公開講座ですから、どなたでもお運びいただけます。かつ、正規の授業でもあるので、履修学生も参加しています。 

 この双方を具備するもの、というのが、今までできなかったんですね。先月17日のこの連載でご紹介したように、いま正課の授業で音楽のレッスンを行っていますが、これは内部学生向けで、大学として必ずしも門戸を社会に広く開いたものではありません。

 また、東大に呼ばれてこの方、様々なシンポジウムなどで演奏してきましたが、それはまたそれで一過性のイベントという性格が強かった。

 そうではない、きちんと継続的に探求する意図を持って、しかし社会に開かれた形で、学問芸術の本質を突き詰める、そのような真剣な場をこそ、私は求めていました。言うなればフランスの「アカデミー・フランセーズ」のようなもの。

 つまり、登壇者はライフワークを命懸けで語り、それは単に学校の中で学生が享受するというのにとどまらず、広く社会に発信され、場合によっては書籍化もされ、大きな影響を及ぼしていく。

 このような真剣な場が持てればと考えて1999年8月、東大からの招聘を受けたのでした。しかし実際にそういうことが可能になるまで、10年以上の時間がかかりました。