ヒット商品やロングセラー商品の開発担当者に「ぜひともここを見て!」というこだわりのポイントを披露してもらうココミテ選手権。今回登場するのは、タニタの活動量計「カロリズム」シリーズの企画・開発に携わっている加藤純氏だ。
活動量計とは、「何歩、歩いたか?」を計測する歩数計と違って、「1日で何キロカロリーを消費したか?」を計測することができる機器である。初号機の発売は2009年だが、2012年7月に発売した「カロリズム エキスパート AM-140」は、その4世代目にあたる高機能モデルだ。
その最大の特徴は、開発に4年を費やしたという「カロリズムエンジンPRO」を搭載した点にある。これは、1日の体の動きを6秒ごとに「安静」「生活」「歩行」「走行」の4つの行動に自動的に判別し、1日の総消費エネルギー量だけでなく、1時間ごとの身体活動の変化を「24時間カロリズムグラフ」で表示することができる。
加藤氏はこのユニークな商品の企画・開発に初期の頃から携わっている。「運動の量を“消費カロリー”という分かりやすい指標で計測したい」というアイデアを実現するには、なみなみならぬ努力を要したようだ。どんな創意工夫があったのか、耳を傾けてみよう。
データ採集に追われた
開発中の悪戦苦闘の日々
──日本食品分析センターの指標によると、食品のカロリーは脂肪が1グラム当たり9キロカロリー、タンパク質や炭水化物は4キロカロリーなどと基準が明確になっています。ところが、運動や生活活動の消費カロリーの計算方法はいろいろあって、あいまいですね。「カロリズム」は、どうやってそれを実現したのですか?
加藤純氏(以下、敬称略) 「呼気分析法」と言って、吸った酸素の量と、吐いた二酸化炭素の量を分析する方法が1つの指標になります。
実際に計測するには、口と鼻を覆うマスクをつけて吸ったり吐いたりして分析するのですが、まるで宇宙を舞台にしたSF映画の登場人物のような出で立ちになります。でも、タニタの社員なら見慣れたもので、中には「ご苦労さん」と声をかけてくれる人もいるでしょう。私もデスクワークをしているときの消費カロリーのデータをとるため、何度かマスクをつけて仕事をしましたが、代謝を正確に計測するにはしゃべることができませんので、相手とのコミュニケーションは筆談やメールです。それはもう、大変な苦痛なんですが、うっかりしゃべってしまえばまたやり直しですから、それに堪えねばなりません。
データは、デスクワークをしているときだけでなく、家事をしているとき、階段を登っているとき、ジョギングをしているときなど、あらゆる場面を想定し、年齢、性別ごとに複数のものを集めなければなりません。