カンヌ国際映画祭で是枝裕和監督の『そして父になる』が審査員賞を受賞した。出生時に病院で息子が取り違えられていたことを知った父親の葛藤を描いた作品である。
審査員賞を受賞した『そして父になる』
1970年代にテレビドラマ「木下恵介アワー わが子は他人」でも取り上げられていた決して新しくないテーマだが、少子高齢化が進み、東日本大震災、そしてハーグ条約正式加盟へと向かう今、家族というものの姿が問い直されている中で、どんな切り口で描いているのか、10月の公開が今から楽しみである。
最高賞パルム・ドールは、下馬評通り、『クスクス粒の秘密』(2007)などで2度セザール賞を受賞しているチュニジア出身のアブデラティフ・ケシシュ監督の『La vie d’Adele(アデルの人生)』。
グランプリは『バートン・フィンク』(1991)などで知られるコーエン兄弟が監督し、人気者ジャスティン・ティンバーレイクが主演した『Inside Llewyn Davis』と個性派が並んだ。
是枝作品はこれらに続くとの位置づけだが、ほかにも、ロマン・ポランスキー、スティーブン・ソダーバーグ、フランソワ・オゾン、パオロ・ソレンティーノ、ジム・ジャームッシュといった大物の作品が数多くある中での受賞だけに価値がある。
パルム・ドール受賞作は、年上の女性との恋愛で成長していく少女の物語。
今月18日、激しい論争が続いた同性婚合法化法にフランソワ・オランド大統領が署名、フランスは同性婚を認める14番目の国となったばかりで、合法化反対派の大規模なデモで逮捕者まで出す騒ぎとなったことがカンヌからのニュースと同時に伝えられており、時代の空気を映し出す受賞結果ともなった。
そんなカンヌから列車で40分ほどのところにあるニースから、23日、シャンソン歌手ジョルジュ・ムスタキの訃報が届いた。
1974年のテレビドラマ「木下恵介・人間の歌シリーズ バラ色の人生」で数々の曲が使われていたこともあって、日本での人気も高く、その主題歌となった「私の孤独」は当時ラジオでよく聞かれたものだった。
そんなムスタキの出世作は1969年発表の「異国の人」。ロマンチックな邦題だが、その原題「Le Métèque」は、出稼ぎ労働者などに対し軽蔑的に使う「ガイジン」を意味する言葉。