中米ベリーズ北部、メキシコ国境近くのマヤ遺跡で、2300年前のものとされるピラミッドが、ブルドーザーなどで破壊されてしまった。地元の建設業者が道路の舗装に使うためにしたのだという。

良質な石灰石のピラミッドは建材にも最適と・・・

ベリーズ最大の都市ベリーズシティでもこんな感じ

 ピラミッドには良質の石灰石が使われているため、これまでも同様の破壊行為があったらしい。

 そんな話を聞くと、ベリーズの観光文化相の「無神経で無教養、理解に苦しむ行為」とのコメントにうなずいてしまうが、こうしたことは決して稀なものでもないようだ。

 というのも、以前、私はパキスタンのインダス文明の貴重な遺跡モヘンジョダロを訪れた際、遺跡ガイドから「管理が手薄なこともあって、発掘品を近隣住民たちが持ち帰り自分の家の建材に使っているようなのだが、貧困層の家を壊すことまでして返せとも言えず、そのままになっている」という話を聞いたことがあるからだ。

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

 結局、観光収入など、遺跡から受ける恩恵が少ないという現実の表れとも言える事件なのかもしれない。

 ベリーズにも歴史的に重要なマヤ遺跡は数多くあるが、世界遺産に登録されているものはなく、世界の注目度は低い。

 昨年末のマヤ暦が途切れるという「世界終末の日」騒動の時も、メキシコのパレンケやグアテマラのティカル、ホンジュラスのコパンといった世界遺産になっている有名なマヤ遺跡に多くの観光客が押しかけた様が大々的に報じられても、ベリーズからのニュースに接することはなかった。

 多くの日本人にとって、マヤ遺跡と言われてまず思い浮かぶのは、東京ディズニーシーの人気アトラクション「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー クリスタルスカルの魔宮」の遺跡のモチーフとなったことでも知られるメキシコのチチェン・イッツァかもしれない。

 しかし、その「クリスタル・スカル」と呼ばれる頭蓋骨の形をした水晶の中で特に有名なものは、ベリーズ南部のルバアントゥン遺跡で1920年代に英国人が発見したとされているのだ。

 とはいえ、アトラクションとは直接共通点はないのだが、『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)の題名で映画となったとき、クリスタル・スカルは、ベリーズでもメキシコでもなく「地上絵」で知られるペルーのナスカで見つかることになった。