マット安川 ゲストに憲法学者・小林節さんを迎え、改憲派でも批判せざるをえない、という自民党の憲法改正草案を斬っていただきました。96条改正の是非、愛国心や家族のことを憲法に入れるのは筋違い、など、ポイントごとに詳しくお聞きしました。

憲法96条の改正はアンフェア。9条改正に真正面から挑め

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小林節/前田せいめい撮影小林 節(こばやし・せつ)氏
憲法学者、慶應義塾大学教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。近著『「憲法」改正と改悪』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

小林 自民党は憲法改正を目的につくった党でありながら、歴代内閣は自分の内閣の間は憲法は議題にしないと言って逃げてきました。

 ところが、安倍(晋三、首相)さんだけは憲法を必ず議題にし、前の安倍内閣の時に憲法改正国民投票法を作った。安倍さんは今も本気で動いているという感じがします。

 私は憲法の中身を変えることについて大賛成です。よい憲法にしようと。憲法9条の改正は私の持論であり、その点では安倍(晋三、首相)さんとまったく一致しています。

 侵略はしない、自衛はする、そのための軍隊は持つ、条件次第では国際貢献で海外派遣もする、と。そうやって堂々と国民に語りかけて、憲法9条改正に真正面から取り組めばいいんです。

 しかし、今の動きは96条をまず変えて憲法改正の手続き条件を下げるというものです。まるで裏口入学のようで、フェアではありません。

 安倍さんは「普通の国」が好きですが、世界の普通の国では憲法改正のハードルを高くするのが常識です。

 日本の改憲の規定である両議院の総員の3分の2以上の賛成が必要というのは、欧米諸国などと比べても特別厳しいものではありません。今の日本の規定は世界標準です。