口蹄疫の感染拡大が続いている。

 6月9日には、これまでまったく感染報告のなかった宮崎県都城市で3頭の牛に口蹄疫の疑いがあることが分かった。すぐさま遺伝子検査のための検体が東京の動物衛生研究所に送られ、翌10日には口蹄疫の感染が確認された。

 現地の対応は迅速で、症状は口蹄疫以外に考えられないとの判断に基づき、検査の結果を待たずに農家が飼育していた208頭すべての牛を10日の未明に殺処分したという。

 都城市は、すでに口蹄疫の感染が広がっていた川南町から約60キロ、えびの市からでも40キロほど離れている。

 大規模な消毒態勢に加え、家畜の殺処分やワクチン接種などの感染防止策が取られていたにもかかわらず、これだけの距離を隔てた場所にまで口蹄疫ウイルスが飛び火したことで事態は一層深刻になった。さらに翌11日には、宮崎市と日向市でも豚が口蹄疫に感染していることが判明した。

これまでの対策では感染拡大を防げない

 初動態勢は遅れたものの、国と宮崎県は、口蹄疫の感染を川南町を中心とした県央部に封じ込めようと懸命な対策を行ってきた。

 その結果、5月下旬には一旦感染の広がりが収まって、6月4日には、えびの市周辺での家畜の移動制限の解除が発表された。

 また感染が疑われていた“エース級種牛”5頭の「陰性」も判明して、東国原英夫知事は「夏休み前には安全宣言を出したい」と終息に向けての明るい見通しを語った。

 そうした矢先に宮崎県内数カ所で新たな感染が明らかになったということは、これまで進めてきた対策では、口蹄疫ウイルスの感染拡大を防げないという事実を示している。

 都城市は日本有数の畜産地であるだけでなく、豚と和牛の飼育頭数全国一の鹿児島県に隣接している。早速、宮崎県と鹿児島県を結ぶ一般道路を封鎖し、幹線道路で車両の消毒を徹底するとの対策が発表された。

 素早い対応が功を奏して、口蹄疫の封じ込めが成功することを願わずにはいられないが、今後の展開は楽観を許さない。

 折しも九州地方は梅雨入りし、6月14日、15日には大雨のために殺処分の作業が中止されたとのニュースが報じられた。