民主党党首の海江田万里氏が、経済評論家時代に安愚楽牧場を奨めていたと、被害者から賠償請求を求める裁判を起こされています。

 個人的には、海江田氏に同情しています。以前も書きましたが、 和牛商法は話題になっていた1995~96年ごろから既に怪しさがつきまとっていました(「農業の『資金調達』の壁が破られる日」)。投資家に見せる目論見書を私もいくつか読んだことがありますが、どう見ても和牛肥育も市場構造も知らない人が書いているか、「こいつ詐欺だな」と考えざるを得ないものでした。

 少なからぬ投資家もそのあたりは分かっていたようで、「夢がある」「小額しか投資していない。金が返ってこなくても勉強料だ」と割り切ってカネを出していたのです。

 そのためかどうか知りませんが、安愚楽以外の和牛商法の会社が破綻した時は、安愚楽牧場の破綻ほど話題にはなりませんでした。それが今回破綻して、被害者の投資額の大きさに私もびっくりしたというのが本音です。被害者たちは、話題になっていた頃には、せいぜい数十万投資して“遊んでいた”のが、長年配当があったことで信用して大きなカネを預けるようになったのでしょうか?

常に周囲を騙していたローマ教皇

 <総じて人間は、手にとって触れるよりも、目で見たことだけで判断してしまう。なぜなら、見るのは誰にでもできるが、じかに触れるのは、少数の人にしか許されないからだ。そこで、人はみな外見だけであなたを知り、ごくわずかの人しかじっさいにあなたと接触できない。しかも、この少数の者は、国の尊厳に守られている大多数の人の意見に、あえて異を唱えようとはしない。>
(『君主論』、マキアヴェリ著、池田廉訳 中公文庫)

 

 チェーザレ・ボルジアの父であったローマ教皇アレクサンドル6世(以下、アレクサンドル)は、腐っても教皇ですから、キリスト教徒のトップとして敬意を持たれていました。とはいえ、敬意を持っていたのは一般の信徒であり、世俗権力(国王など、各国の支配者)にとっては簡単に滅ぼせない強敵です。