安倍晋三総理の訪米が成功裏に終わった。安倍総理は首脳会談後の共同記者会見で、「日米同盟の具体的な政策においても、方向性においても完全に一致することができた。日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信を持って宣言したい」と述べ、日米同盟の復活と深化という懸案が達成されたことを明確にした。
この日米首脳会談の成果の1つとして、京都府京丹後市の航空自衛隊・経ヶ岬分屯基地に米軍の早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」を追加配備する方針が打ち出された。これが実現すれば、青森県つがる市の空自・車力分屯基地に次いで国内2カ所目となる。
経ヶ岬へのレーダー配置は、北朝鮮がグアム方面にミサイルを飛翔させる場合の探知・追尾を主眼としているが、東京など首都圏をめがけたミサイル発射の警戒も担うことになる。車力分屯基地のレーダーは主に米本土を標的とするミサイルの探知・追尾を目的としており、経ヶ岬のレーダーと役割が分担される。
朝鮮半島をカバーし、中国の弾道ミサイルも探知
実は、2カ所目のXバンドレーダーの設置を巡っては紆余曲折がある。2012年8月の「ウォールストリート・ジャーナル」の記事では、沖縄が候補に挙げられていた。9月にはパネッタ国防長官(当時)が来日し、米国から調査チームを派遣することが伝えられ、中国を刺激することを避ける意味合いを含め、「沖縄以外の日本の南部」ということで日本海側の適地を探っていた。
パネッタ長官に同行した米高官は「レーダーは中国に対する防衛用のものではない」ことを指摘しつつ、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するものであることを強調していた。経ヶ岬分屯基地は、北朝鮮を睨む位置としてまさに「適地」であろう。
経ヶ岬に実際に配備されるレーダーは、車載移動式のXバンドレーダー「AN/TPY-2」で、車力分屯基地に配備されたものと同じとされる。その有効探知範囲は約1000キロメートルとされるが、1平方メートル級の目標なら、探知可能な範囲は約2300キロメートルにも及ぶ。ということは、1000キロメートルなら朝鮮半島全域がカバーされ、2300キロメートルなら中国の北部沿岸地帯もカバーされることになる。
仮に1000キロメートルであるとしても、中朝国境の北部、吉林省・通化がギリギリ含まれる。通化には、中国が日本を標的に配備している「東風21」など中距離弾道ミサイルの基地がある。北朝鮮の弾道ミサイルに対する警戒が主眼であるとしても、経ヶ岬のレーダーは中国の弾道ミサイルも探知・捕捉し得るのである。