政府による露骨な圧力により、日銀が一段の金融緩和に踏み切り、2%のインフレ目標が設定されるに至った。換言すれば、「超」の文字がいくつも付く低金利時代がさらに長期化することが決まったわけだ。

 庶民の預貯金金利はもはや上がる気配がないのはご存じの通り。こうした状況下、様々な誘惑が読者を危うい投資話に招き入れようとしている。誘惑と言うより、はっきり詐欺と言った方がよい案件もある。自分は騙されない。そう考える向きも多いはずだが、詐欺の手口は巧妙で、進化を続けているのだ。 

「医療機関」の健全なイメージが悪用された

 「元本保証で高リターン」・・・。

 巷にはこんなおいしいキャッチコピーで虎の子を巻き上げようと狙う輩が溢れている。そんな安易な手口に引っかかる向きはいないと言うなかれ。先週、大阪府警が乗り出した案件も典型例だ。

 主要な報道を要約するとこうなる。

 東京都新宿区にある実質休眠状態だった医療法人が、設備投資を使途に医療機関債を発行した。元本保証と約4%の高利率が提示された結果、お年寄りを中心に全国から約12億円を集めたというもの。

 もちろん事件化した案件である。休眠状態だった医療機関が設備投資に集めた資金を振り向けた痕跡はなく、集めたカネはいずこかに溶けてしまったという構図だ。

 被害者は全国に約400人に上り、大半が老後の大切な資金を巻き上げられたわけだ。同府警は病院理事長のほか、詐欺事件の主要メンバーを逮捕したが、当の理事長は容疑を否認しているという。

 この事件については、2012年から消費者庁が注意喚起を行ってきたことから、「それ見たことか」と感じた読者も多いはず。