前回は、文科省「グローバル人材育成推進事業」で各大学が取り組む以下の5分野のうち、(1)の「グローバル人材として求められる能力の育成」を紹介しましたが、今回は(2)~(5)について特徴ある取り組みを見ていきたいと思います。

(1)グローバル人材として求められる能力の育成
(2)大学のグローバル化に向けた戦略と教育課程の国際通用性の向上
(3)教員のグローバル教育力の向上
(4)日本人学生の留学を促進するための環境整備
(5)語学力を向上させるための入学時から卒業時までの一体的な取り組み

大学のグローバル化に向けた戦略と教育課程の国際通用性の向上

 この分野では海外大学との連携を通じたプログラム開発、米国標準のスキル評価ツールの導入、教育実績の戦略的なPR、事務職員のグローバル化など非常に意欲的な施策が多々見受けられますが、学内の抵抗勢力に阻まれがちな分野でもあります。

 いかに関係者間のコンセンサスを獲得し、スピーディに実行できるかがポイントで、学長や担当者のリーダーシップが問われるところです。

 例えば、立命館アジア太平洋大(APU)では、アクティブラーニングや課題解決型・能動的学習授業を推進するとともに、その学習成果として、異文化間の知識と能力、批判的思考力、学習の統合、問題解決力、チームワークの5つの指標を、「Value Rubrics(Association of American Colleges and Universities が定めた米国標準の評価ツール)」を通じて測ります。

 これまでのグローバル人材教育はどうしても定性的な議論に終始しがちだったので、APUのように語学力以外のスキルを定量的に測る試みは珍しいケースです。

 学生本人は、自身の到達度合いが可視化されることでより効果的な学習をすることができるでしょうし、何より世界の多くの高等教育機関が導入しているため世界の中での自分の位置も客観的に把握できるので、自然と視線が世界へ向けられるはずです。

 また、九州大学では、農学部を対象としたグローバル人材育成を図っていますが、特に農学部職員のTOEICスコアの最終目標を800点まで上げるという非常に具体的かつハイレベルなゴールを掲げています。

 現時点でのTOEICスコアに応じて4クラスに分け、クラス別英語講習を設け、毎年目標をクリアした職員から自習メソッドを共有するセミナーを実施するなど、徹底した施策を計画しています。