エコノミスト・カンファレンス『ジャパン・サミット2012』リポート第3回目の今日は「大震災からの道のり:未来に向けた道標?」をお届けする。 

左から藻谷氏、本間氏、岡本氏、猪瀬氏、ロング氏(撮影:前田せいめい、以下同)

 パネリストは日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏、復興庁統括官の岡本全勝氏、東北復興新聞発行人の本間勇輝氏、東京都副知事(役職は当時。その後、都知事選に当選し現在は知事)の猪瀬直樹氏。司会はエコノミスト誌Banyanコラムニストのサイモン・ロング氏。

ロング 私は2011年3月11日に東北を襲った震災の4カ月後に被災地を訪れました。ジャーナリストとして様々な自然災害を取材し、2004年のスリランカの津波も見ていますが、東北は今まで見たどんな場所とも違っていました。

 これほど繁栄した国で、これだけの災害を目の当たりにするのは初めてです。復興すべき範囲も広大です。今回は、東北の危機はチャンスなのか、どうやって教訓を活かせばよいのかを議論をしたいと思います。

被災前と同じ形に復興する意味はあるのか?

藻谷浩介氏(日本総合研究所 調査部主席研究員)

藻谷 津波は東北の沿岸を広範囲に襲い、多くの漁村がダメージを受け、人命が失われました。不幸中の幸いだったのは、被災地は工業化が進んでおらず、製造業への影響という点では、当初の想定よりもインパクトが小さかったことです。同じような津波が東京や名古屋を襲っていれば、被害は100倍になっていたでしょう。

 復興にはかなりの時間と費用がかかりますが、沿岸部以外ではそれほど大きな物理的ダメージを受けておらず、復興需要で小さな経済的ブームも起こっています。

ロング 被災地域の大半はもともと高齢化・過疎化で衰退していたエリアです。震災前と同じ形に復興する意味はあるのでしょうか。

藻谷 仙台を除けば被災地は震災前から相当に高齢化が進んでいました。震災の前から、その地域の人口は今後30年で半減するとの推計がありました。このトレンドは今後も変わることはないと思います。復興にあたっては、コンパクトなコミュニティを実現することで人口密度を高め、行政サービスが従来よりも効率的にできるような工夫も必要だと思います。