21世紀の米中関係はどうなるのか――。
オバマ政権の中国への対応は甘すぎるとする警告がワシントンで波紋を広げ始めた。その契機は2人の気鋭の中国研究者による本だった。本のタイトルは『ぎこちない抱擁=21世紀の米国と中国』、著者は元国防総省中国部長のダン・ブルーメンソール氏と元財務次官補のフィリップ・スワゲル氏である。2012年末に大手シンタンクのAEIから刊行された。
内容は共著者の経歴が示すように、中国の実態、そして米中関係の展望を安全保障と金融・経済の両面から分析し、予測したものだ。同時にオバマ政権の対中政策を鋭く批判し、政策上の提言を供していた。両氏ともワシントンでは広く知られた実績の多い政策提言者でもある。
米中関係は、超大国の米国にとって最も気になる二国間関係である。その米中関係が今後どう動いていくのか。その行方のほとんどは中国の出方にかかっている。なぜなら国際関係、特にアジアの情勢については、米国は基本的には現状維持派だからだ。しかし、中国はまさに急速に台頭する勢力であり、今後どのような対応をしてくるのかは分からない。その中国の動き次第で米国の出方が変わってくる。そしてその結果、米中関係が形成されていくわけだ。
米国の目標は中国の言動と世界観に変化を起こさせること
「ぎこちない抱擁」という同書のタイトルは米国と中国との今後の心地のよくないハグを表現している。米中両国は安全保障や政治的価値観でいかに激しく対立しても、経済面や対テロ闘争などでは協力をしなければいられない。お互いを抱きしめることも必要となる。ただしその抱擁が、仕方なく、心地悪く、ぎこちない表面だけのポーズとなる見通しも十二分にあることになる。そんな見通しへの思いを込めたのがこの書のタイトルなのだ。
共著者のブルーメンソール、スワゲル両氏は本書の内容について、多様なメディアで発言し、寄稿している。寄稿の中で最も長文だったのが政治雑誌「ナショナル・インテレスト」2012年12月号に掲載された「中国そして、ぎこちない抱擁」と題する論文である。この論文は本書の骨子とそれに基づくオバマ政権への警告を明確に記している。その重要点を紹介して、米中関係の今後への指針としよう。
同書は中国の今後の政策の重要部分として対日政策もたびたび指摘している。言うまでもなく米中関係の動向はわが日本にも重大な影響を及ぼすのである。
同書はまず米中関係の基本について以下のように要旨を述べる。
・米国にとって中国は敵でも友でもない。経済面でのパートナーであると同時に安全保障面での競合相手なのだ。中国は米国を深い疑惑の目で眺め、自国の領域外での行動がグローバルなインパクトを発揮することを理解していない。このダイナミックな中国の動きにうまく対処することこそ米国にとっての極めて重要な挑戦なのだ。米中両国はぎこちない抱擁を余儀なくされる。一方では両国は共通の経済上の利害に結ばれ、その一方、安全保障上は互いにナイフを突きつけ合っているからだ。