総選挙は自民党の圧勝に終わったが、これは自民党が勝ったというよりも民主党の3年間の政権運営があまりにもひどかったことに対する当然の審判だろう。
全国の比例得票数で見ると自民党は1662万票で、2005年の郵政選挙の2588万票を大きく下回り、民主党に政権を奪われた2009年の1881万票にも及ばない。得票率も27.6%で2009年の26.7%とほとんど同じだが、投票率が前回より約10%ポイント低く、小党乱立で票が分散したことが自民党を利する結果になった。
「脱原発バブル」の崩壊
特に目立つのは、選挙戦で争点になった「脱原発」についての有権者の関心が低く、これを目玉にした党や候補が惨敗したことだ。公示直前に結成された「日本未来の党」は61議席から9議席に激減し、代表代行の飯田哲也氏も落選した。
もともと未来の党は、民主党に逆風が強く選挙で負けることが予想されることから、小沢一郎氏が党を割って「増税反対」を看板にして生き残ろうとしてつくった「国民の生活が第一」が母体である。
それが反増税だけでは集票効果がないと見たのか、小沢氏は反TPPの山田正彦元農水相などを取り込んで未来の党をつくり、脱原発の看板として嘉田由紀子滋賀県知事をかついだ。「卒原発」を掲げた「シングル・イシュー」選挙だったが、有権者はそれよりも景気対策を求めた。
「原発ゼロ」を1枚看板にして戦った菅直人元首相も小選挙区で落選し、比例で辛うじて復活した。脱原発を掲げた民主党が大敗した一方、脱原発の看板を下ろした日本維新の会は躍進した。
ここから分かるのは、もはや脱原発か否かといった問題は争点にはなりえないということだ。原発はエネルギー問題の中の3割を占める電力の3割、つまり全エネルギーの1割ぐらいの経済問題にすぎない。
日本経済がマイナス成長になり、家電メーカーや半導体メーカーの経営危機がささやかれている現状で、電気代を上げて製造業を国外に追い出す脱原発政策が支持されないのは当然だ。本当の民意は、日本経済を復活させてほしいということなのだ。