ニッケイ新聞 2012年11月8日

県人移住百年誌を制作、移住者に寄稿、写真募る

 2013年に県人ブラジル移住百周年を迎える岐阜県で、東海地方で育ったデカセギ子弟の若者が中心となって設立したNPO団体「Mixed Roots×ユース×ネット★こんぺいとう」がこのほど、岐阜県人ブラジル移住百年誌を制作することになった。

「移民の原点を振り返ろう」と、神戸移住センターを訪れたときのメンバーら

 進学や就職で困難な状況に置かれている南米出身の若者を、職業教育や就職先の開拓などを通じて支援する目的で結成された同団体。

 制作する記念誌から先人の歴史、自分たちが日本にいる理由を知り、将来に迷い自己肯定感の低いデカセギ子弟に自信や希望を持たせるとともに、岐阜に関係する当地在住者と母県住民が繋がる新しいきっかけを作りたい考えだ。

 団体設立は今年の5月。活動拠点は同県美濃加茂市に置き、創立者7人の大半が大学講師や医療通訳、自治体の外国人相談員として働くデカセギ子弟だ。

 同代表は、リオ出身で岐阜市在住の渡辺マルセーロさん(三世)。13歳で訪日して高校、岐阜大学を卒業し、病院で働きながら行政書士試験に合格し、事務所を開いている。

 「岐阜にはたくさんのブラジル子弟が暮らしているが、未だ不就学児もおり、地域からの理解も低い」と語るのは愛知淑徳大学准教授で、同団体の理事、アドバイザーを務める小島祥美さん。

 日本の報道によれば、中学校から高校に進学するデカセギ子弟の割合は、愛知や岐阜などの集住地で8割程度。なかには6割にとどまる自治体もある。日本語能力の乏しさに加え、不況で親が仕事を失い、経済的な問題で進学を諦める人もいるという。

 「支援をされる側でなくする者として、外国にルーツをもつ子どもが活躍できる社会をめざし、地域社会の活性化や住みよいまちづくりに寄与する活動を実現したいと思った」(小島さん)

 記念誌では、伯国と岐阜の架け橋となって活躍した歴史的人物の業績、県内でデカセギ子弟への支援活動を行う団体、伯国と岐阜をつなぐ人々、岐阜在住外国人の現状などを取材し、紹介する。県内に暮らす外国人住民に対する理解を深め、多文化共生社会作りへの貢献を目指していく。

 発刊予定は来年3月。子供も理解できるような平易な日本語とポ語で表記し、完成後、来年1年間を通して県内の学校で冊子と写真を用いた移民の歴史を考える参加型学習、移民の写真展実施なども計画している。

 そこで同団体では、当地在住の岐阜に縁のある移住者に対し、移住する前の母県での生活や景色、移住時や移住後のブラジルでの生活(移民収容所や船の中、仕事姿、学校、家族で集まっているところ、街や店の風景など)の写真や、ブラジルでの苦労話、岐阜での思い出などをつづった寄稿を呼びかけている。

 写真、寄稿文の提供は岐阜県人会で受付けており、山田彦次会長も「全面的に協力したい」と話している。

 県人会事務所の連絡先は次の通り。住所=Rua da Gloria, 279, 2o. andar, sala 21, Liberdade、電話=11・3209・8073、FAX=同3208・4207、メール=gifukai@nethall.com.br)。

 受付は11月末まで。提供にあたっては提供者の名前や出身地、写真の時代と簡単な説明文が必要。問い合わせは同団体の渡辺さん、小島祥美さん(メール=youth.conpeitou@gmail.com、HP=www.youth-conpeitou.blogspot.jp)まで。

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