SNSの普及は、一時期の勢いは感じられないものの、確実に増えてきている。そんな中、日本の企業においても公式アカウントを運用したり、従業員によるフェイスブックの活用が加速するなど、SNSを管理対象として意識せざるを得なくなってきた。
しかしご存じの通り、SNSの管理者や一般の従業員の不用意な一言がニュースになり、一晩で企業イメージがダウンしてしまうような事態も見受けられる。
最近の例で言うと、ファッション通販サイト「ZOZO TOWN」を運営する会社の経営者の一言は、つぶやきというレベルを超えた暴言、いや、何か裏があるのではとまで疑ってしまう「迷言」とも言えるほどのものであった。
結果的にその会社は「送料無料化」という収益への直接的な打撃を被るに至った。さらにそれ以上に、企業としての顧客に対する姿勢を問われたり、経営者の適性への疑念にまで及んだ。不用意につぶやいた、たった1つのツイートの代償はあまりにも大きい。
そこまでの例でなくとも、ホテルの従業員が宿泊した著名人の名前を明かしてしまったり、社員が自社製品の不適切な使い方を暴露してしまった例など、呆れるしかない話も多々見受けられる。
IT業界でも、昨今の厳しい環境でのプロジェクトの多さから、社員が精神的に行き詰まり、SNSを通じて外部に暴言を吐くことで救いを求めてしまうような例も頻繁にある。また、フェイスブックユーザーなら分かると思うが、社内のことや仕事のことを不用意に外部に開示してしまっている人がいかに多いことか。
ガイドラインの作成と浸透に追われる企業
こういった事態を受けて、問題が起きるたびに各社は謝罪対応に追われ、解決策をあわてて考えてきた。それらは、ここ1~2年の間に生じた、いわば「新業務」である。
リスクマネジメントの方策として、ポリシーやガイドラインの作成、コンプライアンスや情報管理に関する教育の徹底などが挙げられる。大企業を中心に、そういった“憲法”の整備に走る企業は多いようだ。
専門家の助言を受けて、ひな型に基づきガイドラインを設定する。そして社内サイト上やファイルサーバにアップして、全社員に「見ておくように」と通達する。あとは定期的な研修を行ったり、部門ごとの管理者を指名したりする、といった取り組みだ。
これらの取り組みを見て、ふと「これで大丈夫なのだろうか」と思う。対策がいかにも「総務的」というか、杓子定規に感じられて仕方がない。火災時の避難ルールと防火責任者の設置とよく似ている。文字通り「炎上」を防ぐから、対策も似てくるということなのだろうか。