その「噂」を耳にするようになって1年以上が経つが、真偽のほどは未だ定かでない。

 中国資本が豊かな水源地を求めて、日本各地の森林を買い漁ろうとしているという噂である。にわかに信じ難いが、だからといって全くのほら話かというと、そうとも言い切れない。そのものではないものの、それらしき事実があるからだ。

日本の「水」を中国が買い漁る?
(参考写真、中野哲也撮影)

 2008年以降、三重県や長野県などの山林部では中国人らしき人物の影がちらつき始めた。「森林を買いたい」――。仲介者を通じてそうした買収の持ち掛けがあったことは、それぞれの自治体が認めているという。しかし、これまでに売買交渉が成立したケースはないとされ、確かなところは何も分かっていない。

 相手は本当に中国人なのか。だとすれば、その動きの先にある真の狙いとは?

 何も分からぬまま、やれ「中国資本による大規模な水源地買収」と騒ぎ立てるわけにもいくまい。林野庁ですら、その実態は未だはっきりとつかめていない。薄気味悪く、どうもすっきりとしない話である。

 ただ言えることは、そんな噂がささやかれてもおかしくない現実が今の中国にはあるということだ。

水不足が深刻な中国、あり余る資金で買えないものなし

 急速な経済発展を遂げた中国は、深刻な水不足にあると言われている。工業用水の不足は慢性化し、農業用についても旱魃の影響や国民の食生活向上などを背景に不足がちとされる。

 一方、彼の国の存在感は、世界経済の中で途轍もなく大きくなってきた。名目GDP(国内総生産)は2010年中に日本を追い抜き、世界2位に浮上することが確実視されている。