尖閣諸島の「国有化」を巡り、中国で「反日デモ」の嵐が吹き荒れた。日中関係は国交正常化以来40年で最悪の事態を迎えた。
しかし冷静に考えれば、中国政府の暴力的示威行動を容認する「野蛮さ」を世界が目撃し、国際社会のリーダーとしての資質を疑われるとともに、「反日」デモを容認しなければ権力を維持できない「共産党独裁体制」の弱点を抱えた中国を世界は認識したはずだ。
世界経済が低迷している折柄、高成長を維持している中国に「気兼ね」をしている国は多い。また日本の尖閣諸島「国有化」を巡る中国との外交的意思疎通の稚拙さを指摘する向きも多い。だから表面的には中国の「攻勢」に日本が押されているように見える。中国にすれば、GDPで追い抜き、衰退する日本など何するものぞ、という意気込みもあろう。
しかし、現状において尖閣諸島を実効支配しているのは日本であり、中国ではない。中国がいくら「国有化は無効だ」と言っても、それは中国の理屈であり日本では通用しない。それがけしからんと言って、反日デモで日本食のレストランや日本車、日系企業の工場を破壊しても事態は変わらない。
「国有化は中国の主権侵害だ」と言われても、ではこれまでの個人所有は中国にとって主権侵害ではなかったのか、と問われれば「これまでも主権侵害だった」と言わざるをえないはずだ。要するに、日本が尖閣諸島を「国有化」したことで事態に変化はなかったのだ。だとすれば、「国有化は中国の主権侵害だ」と言うことは根拠を失う。つまりは日本に対する「言いがかり」だということになる。
「落とし所」が見つからず対立は長期化
今回の反日デモの原因が尖閣の「国有化」だったとしても、では日本政府が「国有化を白紙に戻す」と言ったら、中国は矛を収めるのだろうか。白紙に戻せば済む問題ではない。もし、尖閣が東京都に売却されたならば、「実効支配」強化のための施設建設等が実行に移され、中国にとってもっと厄介な事態となったことは容易に想像がつく。
尖閣の「国有化」は、尖閣諸島の現状を維持するために選択された政策であることを、日本政府は中国側に説明してきた。8月31日、山口壮外務副大臣が野田佳彦総理の親書を携え訪中し、戴秉国国務委員ら中国側に国有化の意図するところを説明している。