私事で恐縮だが、先日、燕三条地場産業振興センター(地場産センター)の展示即売場で妻がマルト長谷川工作所のニッパー型爪切り(NAIL PRO NP-1010)を試し、「割れやすい爪でもよく切れる」と、即座に購入していた。購入価格は3150円(税込)。

 海外営業でも、基本的にはこうやって地道に売るしかないが、売るためには購入者に製品メリットを理解してもらう必要がある。そのためには、消費者にとっての具体的なアドバンテージを示すことだ。

この日、地場産センターにはドイツからの短期留学生と新潟大学工学部の一行が40名くらいで訪れていた

 例えば、「磨き屋シンジケート」が受注したジェット機外観部品の鏡面加工は、20億円の小型ジェット機の翼の前方部品に使われる。塗料で重量が増えることなく空気抵抗を少なくし、燃料コストを20%ダウンする。

 オリジナルブランドの究極のステンレス製ビアマグカップは、「飲み終わるまでクリーミーなビールの泡が残り、冷たさが持続し、ビールの風味も損なわない」——どの言葉にも説得力がある。

 ただ、国内営業では成功していても、途上国で営業開拓を進めていくには、足りない要素があるようだ。それは、「即戦力としての途上国人材」「現地ネットワーク」「現地での継続的な営業機会」、そして現地営業活動を支える「営業支援ツール」だ。

従来の中小企業向け海外展開支援策に欠けているもの

 従来、中小企業向け海外展開支援策には、海外営業面に資する前向きの支援策と、知財戦略や国際業務に関する啓蒙等がある。前者については、ジェトロ海外展示会やビジネスマッチングといったイベントが開催され、現地営業機会が提供されている。

 去る9月7日、新潟商工会議所では成長する海外マーケットを狙うべく「今から始める海外通販セミナー」が開催され、ジェトロ担当者等が海外通販の具体的な手続きを説明した。燕三条の地場産センターでも、日頃の中小企業向け研修事業として「パワーポイントビジネス活用講座」といった基礎メニューがある。

 このように、政策的には現地営業機会の提供サービスや幅広い研修事業が行われている。しかし、即戦力としての途上国人材の育成、現地ネットワークの構築、現地営業支援ツールの開発といった領域に関しては、従来、あまり政策支援でカバーされていないように見える。

 一方、今年度はODA政府開発援助を活用した中小企業の海外展開支援策が活発化している。

 そこでは、途上国人材の確保(JICAの民間連携ボランティア制度青年海外協力隊を活用した人材育成・PDF)、現地ネットワークの活用等が期待されている。また、継続的な現地営業の仕組みを構築するための側面支援(ODAを活用した中小企業等の海外展開支援・PDF)も行われている。