米国の垂直離着陸輸送機「オスプレイ」を巡る騒動は混迷を極めている。技術的に「オスプレイ」が他の航空機以上に危険な機体でないことは明らかだが、これほどに問題が大きくなったのは、「沖縄」という場と「安保」というイシューが政治的な化学反応を起こした結果であろう。
多くの国々に拠点を持つロシア軍
いずれにしても、この件に限らず、外国領土に存在する軍事基地を巡ってはなにかと政治的な波乱が発生しやすい。
オスプレイのケースのように、受け入れ国や基地周辺住民との摩擦を招くこともあれば、基地の存在が地域的な安全保障環境に大きく影響を与えることもある。
そこで本稿では、ロシア軍が保有する在外軍事基地をテーマに、これらの基地を巡るポリティクスをご紹介することにしたい。
1991年にソ連が崩壊したことで、かつてのソ連構成諸国に駐留していたソ連軍部隊は、ロシアへと引き揚げるか、さもなくば新たな独立国家の軍へと再編された。しかし、その後もロシア軍は旧ソ連諸国から完全にいなくなってしまったわけではない。
意外と多くの国々にロシア軍は拠点を持ち、活動を展開しているのである。だが、これらの在外ロシア軍は様々な問題に直面してもいる。
基地租借料の大幅値上げ要求に直面
アルメニアやアブハジア、南オセチア、沿ドニエストルといった国・地域の場合、駐留ロシア軍は自らの存立そのものを担保する生命線であるが、アゼルバイジャン、タジキスタン、キルギスといった国々は、相次いでロシアに基地租借料の値上げを要求してきているのである。
個別に見ていくと、アゼルバイジャンのガバラには弾道ミサイル早期警戒レーダー「ダリャール」が設置されており、これがイランの弾道ミサイル発射を探知するうえで絶好の位置にあることから、米露ミサイル防衛交渉におけるロシアの切り札の1つとなっている。
ソ連崩壊後、ロシアはこのレーダーを放棄して撤退し、レーダー自体はアゼルバイジャン政府の所有となったものの、2002年12月にはアゼルバイジャンと10年間の租借契約を結んで再びレーダー運用を開始した。
つまり、まさに今年の12月には租借期限が切れるため、ロシアとしては租借を2025年まで延長すべく、アゼルバイジャン側と交渉を行っている最中だ。