連載「変化と進化を先読みする~メディアの未来」は、加速するデジタル化、スマート化という潮流の下で、メディアはどう変化しどこへ向かおうとしているのかリポートします。
第9回は“ターゲティング”をテーマとします。
ターゲティングとは対象をある目的をもって絞り込むという行為です。それは、“あなたはだれか”あるいは“あなたは何をしようとしているのか”を認識することでもあります。
デジタル化への道のりが始まって以降、“ターゲティング”はメディアにとって長らくの夢でした。
読者はだれで、何をしようとしている人であるかを認識するための手法が、いま、徐々に現実化してきています。本稿ではそれが、メディアと広告ビジネスにどんな影響をもたらしているのかウォッチします。
Point:読者ターゲティングと広告テクノロジー
「“ターゲティング”はメディアにとって長らくの夢」と書きました。メディアと広告の現実に向かう前に、まずはその“夢”の部分から始めましょう。
● マイノリティ・リポート(ウィキペディア)
映画「マイノリティ・リポート」は2054年の米国を舞台にしたSF作品です。トム・クルーズ演ずる主人公の刑事が、追われる立場となり逃走を続ける先々で、街頭のディスプレイが主人公を認識して語りかけるシーンがありました。
隋所に設けられた広告ディスプレイが、通りがかりの人間がだれであるかをいちいち識別して“最適な表示”を行う仕組みが、そこに描かれていたのです。
本稿の主題のテクノロジーとメディアをリードする人々は、こんな未来社会を実現しようと本気で取り組んでいます。
数年前、米グーグルの最高経営責任者(CEO、現在は会長)のシュミット氏は、「誰かが道を歩いていたとする。Googleが集めたその人の情報によって、『私たちには、あなたが大体どこにいるか、大体どんなことに関心があるか、大体どんな友だちがいるか分かるのです。』」と述べています。
● Google CEOエリック・シュミット:「あなたがどこにいるか、何が好きか知っています」(TechCrunch JAPAN)
検索技術とそれに連動する広告によってのし上がった同社の中核コンセプトは、“あなたを知っている”ということです。それを知ることで的確な検索上の答えを提示することは、同時に、的確な広告を表示できることでもあるのです。