明日27日、いよいよロンドンオリンピックが開幕する。

 昨年の今頃起きた暴動も記憶に新しく、テロも怖い。フーリガンの本場でもあることから、治安を心配する向きも少なくないが、そんな声に応えるように、ロンドン警視庁は、2万余りの街頭監視カメラから送られてくる映像を集中管理する「指令室」を先日報道陣に公開し、警備を強化し万全であることをアピールした。

ロンドンだけで監視カメラは40万台

チケット無しでも観戦できるロンドン五輪競技リスト

オリンピック開催を祝うロンドン〔AFPBB News

 こうした監視カメラはロンドンだけでも40万はあるという。英国が世界で1、2位を争う監視カメラ大国であることを改めて思い知らされる。

 ロンドンの監視カメラと聞いてまず思い浮かぶのが、ジョージ・オーウェルのディストピア(反ユートピア)小説「1984年」。「Big brother is watching you」なる標語とともに至る所に設けられた双方向テレビで市民が監視されている暗くよどんだ近未来のロンドンの姿だ。

 英米の反共主義者も好んで引用したこの小説は、ちょうど前回ロンドンでオリンピックが行われた頃書かれ、翌1949年に発表された。

ジョージ・オーウェル「1984

 世はベルリン封鎖で冷戦構造が顕著となり、米国では長年支援を続けてきた国民党軍が中国本土から退散するという誤算もあり、戦前から脈々と続いてきた反共意識は高まるばかりだった。

 第2次世界大戦中、レジスタンス活動に貢献した共産主義者たちが、戦後、各国で少なからぬ政治勢力となっていたことも脅威だった。

 そして始まった反共キャンペーンは最先鋒ジョセフ・レイモンド・マッカーシー上院議員の名を取り「マッカーシズム」と呼ばれることも多いが、裏ではジョン・エドガー・フーバー長官率いるFBI(連邦捜査局)が糸を引いており、「フーバリズム」だ、と言う者さえいる。

 そんなフーバーをレオナルド・ディカプリオが演じた『J・エドガー』(2011)には、マッカーシズムについての描写はほとんどない。

 しかし、この「第2次赤狩り」ではなく「第1次赤狩り」である1919年の共産主義者、アナーキストなどの一斉検挙がフーバーのキャリアの始まりで、共産主義に対する嫌悪感は一生続いたことは描かれている。