先日、旧知の方と偶然に会い、挨拶もそこそこに「ところで『船舶隊』と『船舶工兵』はどちらが正しいのかな」という質問を投げかけられた。
詳しく説明すると、その方が愛唱していた「船舶隊の歌」という曲が「船舶工兵の歌」と題されて掲載されている本があるということであった。
ちなみに「船舶隊」は海軍ではない。陸軍の部隊だ。外地に赴くための物資輸送を担っていたのが陸軍船舶司令部で、広島県の宇品にあったが、その隷下全てが船舶隊と呼ばれた。
別名「暁部隊」──。特殊な船を持ち、その船から多数の上陸用舟艇が出入りすることが可能だったという。「船舶工兵」はこの輸送任務を担っていたと見られる。
ボートに爆弾を積んで体当たりする陸軍の特攻隊
もう1人、最近、偶然再会した方がいる。1944(昭和19)年に発足した「陸軍海上挺進戦隊」に所属したMさん。陸上自衛隊第一施設団の部隊行事で久しぶりにお目にかかったのだ。
Mさんは陸軍士官学校57期。終戦後は自衛隊の前身である警察予備隊に入隊した。陸軍海上挺進戦隊とは、ベニヤ製のボートに250キロ爆弾を積んで夜間に敵艦隊に密かに接近し、体当たり攻撃をするというもので、陸軍による舟を使った特攻隊であった。
秘匿名称は、用いた連絡艇(れんらくてい)の「れ」を取って「〇」で囲んだ「マルレ」。陸軍にこのような部隊が存在したこと自体が極秘だったために、情報は厳重に管理され、現在もこうした事実さえあまり知られていない。
1945(昭和20)年3月、沖縄の慶良間地区では3個の海上挺進隊が「その時」をじっと待っていた。Mさんもその中にいた。
生還することなど望めない作戦だった。「その時」とは、すなわち死地に赴く時のことだ。しかし、国を守るためにはもはや他に策なしという段となっていた。