ニッケイ新聞 2012年5月1日

日伯の農業、企業家が視察、西森下議「今世紀の大事業」

 日伯両国が連携し、モザンビークのサバンナ地帯を農業開発する『プロサバンナ事業』(ProSAVANA)が、民間を巻き込んだ新たな一歩を踏み出した。

 これまで両国の専門家が駐在し研究・調査を進めてきたが、今後民間進出の端緒を開くため17日から4日間、伯国側の事業責任者・西森ルイス連邦下議を始めパラナ農業組合幹部や農業者17人、日本からはJICA(国際協力機構)の乾英二アフリカ部部長や企業家など20人がモザンビークを訪れた。

 訪問団はナンプーラとリッシンガ両市にある農業投資研究所(IIAM)や農場、交通網の中枢となるナッカーラ港を視察。アイレス・ボニファシオ・バティスタ・アリ首相や農務省関係者らと面会するなど、本格的始動に向け気運が高まりつつある。

 同事業はJICAおよびブラジル農牧研究公社(Embrapa)が計1340万ドルの投資をする大規模な農地開発構想。ブラジルを世界有数の食料輸出国に押し上げたセラード開発のノウハウを、同緯度で気候が似通うモザンビーク北部のナカラ回廊周辺に移植するというもの。2010年に3国政府間で調印された。

 内戦で土地が荒れ、飢餓にあえぐ同国を支援すると共に、世界の食糧安全保障も目的に掲げている。日本側は主に経済支援や道路・鉄道などインフラ整備に携わる。

 伯国から参加した10数人の農業者らは「インフラの問題はあるが、ここの土地は肥料なしでも結構成績がよく、気に入った」「少し技術を入れたらもっと伸びそうだ」など手ごたえを感じており、すでに7月に再度視察に訪れる計画も持ち上がっている。

 日本側からは主に大豆とゴマの輸入確保を目的に、伊藤忠、住友、三井、双日、丸紅など多数の大手企業家が参加した。

 世界で食糧危機が懸念される今、一大食料生産地となる可能性を秘めた同地には多国が狙いを定めており、企業家らは先駆けて交渉に踏み切ろうとしているという。

 報告のため本社を訪れた西森連邦下議は「プロサバンナの第一歩を踏み出した。我々は農業者の入植をしっかりバックアップしていきたい。21世紀の大きなプロジェクトになると思う」と表情を引き締めた。

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