中国製ブラックベレーを回収、廃棄した米陸軍
日本でも自衛官の帽子作りの職人は高齢化が進み、数人しか残っていない。完成直前に風邪をひいてしまい、納期を延期せざるを得なかったこともあったのだとか。
他の職人技術と同じように高齢化や担い手不足の問題があり、せっかく築いた日本の誇るべき技術をどう継承していくのかが関係者の悩みの種となっている。
国内の帽子業界全体を見ると、製造拠点を中国に移したメーカーもあれば、廃業に追い込まれた所もある。中国と提携して生き残ろうとしても、うまくいかないケースが後を絶たないという。
中国の製造拠点に1万個オーダーしたら10万個届いてしまい、「違う」と言っても「うちは従業員が1万人だから10万個からしか受け付けないんだ」と受けつけられず、結局、発注側が倒産してしまったなどというケースも聞く。
「うちは帽子屋なので帽子を作り続けます」
そうした中でも、日本官帽制帽では卸売業のようなことはせず、日本人の手によって作る帽子にこだわり続けている。それも、単にかぶるだけのものではない、特に「威厳」と「品格」が必要な帽子に。
「カッコイイ!」と子供たちに憧れられ、部下に尊敬される自衛官の帽子をとことん追求する。そうでなければ彼らがかぶる意味がないとも社長は断言する。
そう言えば、かつて米陸軍のブラックベレーが競争入札で中国製になった時、兵士から不満が噴出した。それを知った参謀総長が、知らぬ間に中国製が採用されていたことに憤慨し、その全てのベレーを回収して在庫も破棄したという逸話を思い出した。
「われわれは戦う軍隊なのだ」
その言葉に、誰も「もったいない」などということは口にできなかっただろう。軍人の誇りとはそういうものではないだろうか。