「ユーロ圏から無秩序に離脱すれば、ギリシャの政治生命は壊滅的な打撃を受けるだろう。ギリシャは単一市場、さらにはEU自体からも追放される危険を冒すことになるからだ。1974年に独裁政治を捨てたばかりの国にとって、欧州からの排除は大きな痛手になるはずだ」

 「ネオナチ政党の『黄金の夜明け』に代表される過激派の台頭に目を向けるだけで、その後に起き得ることは想像がつくだろう」

「ギリシャにならないためにも増税」は全く逆

 リーマンショック以上の経済危機が世界を襲い、さらには政治的な不安定を背景にして世界に紛争が広がる。グリグジットは日本にとって決して対岸の火事ではない。

 消費増税や節電といった景気を冷やす政策でどうしても日本経済の足を引っ張りたいいまの日本政府には、欧州で万が一のことが起きたとき正しい判断ができるのか、かなり不安である。例えば「ギリシャのようにならないためにも増税を」と言い出さないか。

 ギリシャのユーロ離脱問題は、実は多くの教訓を日本に与えてくれている。それは安易な増税ではなく、政治と官僚のムダ取りと、経済活性化こそ必要ということである。

 マーティン・ウルフ氏は「ユーロ危機、調整か解体か、もう待ったなし」の中で欧州に必要なこととして次のように書いている。

 「ユーロ圏は、今の弱い国々を不振の続く地域に、永久に財政移転を受ける地域に変えてはいけない(イタリア南部が低迷しているのは、こうした財政移転のせいでもある)」

 「では、迅速な調整はどのように達成されるのか? 答えはユーロ圏の景気を浮揚させること、そして中核国の賃金上昇率とインフレ率を、弱ってしまった周縁国のそれよりも高くすることである」

 イタリア南部は身体障害者が人口の1割にも達すると言われてきた。もちろん実際にはそんな比率であるわけがなく、政府からの補助金頼りで経済的自立ができないことの象徴として言われる。

 日本の補助金政策の多くもこれに当てはまる。バラマキ政策をいくらとっても自立的な経済発展には何の役に立たないどころかさらなるバラマキを呼び政府の支出は限りなく拡大していく。