政局の焦点は、来週にも予定されている野田佳彦首相と小沢一郎氏の会談になってきた。首相は「話し合い解散」を取引材料にして自民党と交渉する一方、増税に反対している小沢氏を説得しなければならない。

 会談が決裂すると、民主党が分裂して自民党との大連立などの政界再編があるかもしれない。他方、分裂を回避するために両者が妥協して増税や解散を先送りすると、参議院で自民党が反対して否決するだろう。政治は何も決められない、末期的な「脳死状態」である。

「地下茎」が切れてタコツボ化した霞が関

 日本人はこういうニュースが毎日流れるのを何とも思わいないかもしれないが、このように政策ではなく「政局」で政治が決まるのは日本の特殊な現象だ。

 特に奇妙なのは、公式には何の地位にも就いていない小沢氏の去就が政局の焦点になっていることだ。それは国会が機能しない現状では、彼を中心とする非公式の人間関係が決定的に重要だからである。

 こういう状況はねじれ国会で初めて顕在化してきたが、自民党政権からあったものだ。山本七平は自民党の役割を「西洋から輸入した法律が日本社会の実態とかけ離れて役に立たないため、その間をとりもつ」ものだとし、特に省庁が縦割りでそれを統括する内閣の権限が弱いため、派閥は各官庁を裏でつなぐ地下茎のようなものだと述べた。

 それを仕切ったのが、田中角栄や金丸信に代表されるフィクサーであり、それを継承したのが小沢氏である。

 しかし民主党政権は「政治主導」と称して官僚を敵に回したため地下茎が切れ、タコツボ化した官僚組織を仕切る政治家がいない。消費税以外の重要法案も、ほとんど通る見通しがない。法律と行政のギャップを埋めてきた自民党の非公式の調整機能が利かなくなったことが、現在の混乱の原因だ。