スルガ銀行74億円、日東電工24億円──。

 システム導入に関わる立場にある方なら、これが何の金額かお分かりだろう。前記は同社のシステム開発に関わった日本IBMに支払いが命じられた賠償金額。後者は、日東電工のシステム開発に携わったフューチャーアーキテクトからの訴訟に対する反訴の請求額である。

 いずれも大企業とはいえ、相当の額である。これほどの額でないにせよ、「費用に見合ったものができていない」「工数をかけてプロジェクトを行ったが、お金がもらえない」といった話は、実はあちらこちらで起こっている。

 何年か前に雑誌「日経コンピュータ」が、「動かないコンピュータ」というテーマで記事を連載していた。同誌によれば、成功するプロジェクトは「3割未満」だという。

 システム導入の現場に携わることの多い筆者から見ると、3割うまくいっているという実感はあまりない。むしろ、うまくいったという話はほとんど耳にしたことがない。

 ここ数年、プロジェクトマネジメントや要件定義が強化されてきてはいるが、帳尻を合わせて終わった形にするのがうまくなっただけのようにも思える。今やシステム開発会社にとってもユーザー企業にとっても、システム導入は「失敗して当たり前」という、いわば「負け癖」がついてしまった業務の1つと言えるだろう。

必ず生じる「解釈の幅」

 先日もこんな話があった。

 あるプロジェクトで大損失を被ったシステム開発企業から、次のような依頼があった。「当初は2年でシステムが完成する予定だったが、結局5年かかってしまった。それもスコープを縮小して。一体何が問題だったのか、繰り返さないためにどうすればよいのかを明らかにしたい。ついては、第三者として調査に協力してもらえないか」という。

 当社は、関係者30名ほどにインタビューを行い、事実関係の確認をしていった。すると、システム開発会社のほぼ全員が「自分にもよくないところがあったんですよね」と能力の面などで自らに否があることを認めた。