4-6月期の長期金利はこれまでのところ、10年債利回りで1.250~1.405%という狭いレンジ内で安定推移している。下表から分かるように、5月に入るとギリシャ財政危機からソブリンリスクの怖さを痛感したとみられる日本の政府当局および民主党内から、財政規律を意識した動きが目立つようになってきた。財政健全化が実際に進展するのかどうかには不透明感が漂うものの、債券市場のセンチメントに、ある程度の好影響を与える話ではある。

図表1: 今年4~5月に出てきた、財政政策・国債需給に関連する主な材料
<4月>
2日 外為特会の2009年度評価損が24兆円超と過去最大に 外貨資産評価損が1ドル=約93円基準で24兆円超となり、20.6兆円の積立金を超える規模に。「埋蔵金」活用論議に影響が及ぶ公算(2日日経)。
7日 亀井国民新党代表が追加経済対策案とりまとめに言及 すでに公表した11兆円規模の対策案への上積みを視野に、5月中旬くらいまでに党としての案をあらためて取りまとめたいと発言(定例記者会見)。
17日 公立小中学校の耐震化・老朽化対策で予備費を支出へ 鳩山首相が川端文科相らに指示。経済危機対応・地域活性化予備費1兆円から、通常国会終了後に800億円程度を支出する方向。
20日 財政健全化法案の原案2案が判明 プライマリーバランス黒字化か、国・地方の財政赤字のGDP比3%以下という目標を掲げて、2020年度までの財政健全化を目指す内容(21日日経)。
28日 財務省が歳入・歳出の影響試算 民主党マニフェストを完全実施する場合、2011年度の歳出・歳入差額は57.3兆円に増加する(税収38.4兆円、税外収入4.0兆円という前提)。
<5月>
6日 民主党の国民生活研究会が子ども手当半額現物給付を提言 民主党のマニフェスト見直し作業で子ども手当を担当する国民生活研究会が、2011年度からは2万6000円満額現金給付ではなく、半額の1万3000円については自治体を通じた保育所整備などの現物給付にするよう提言。
8日 高額療養費制度自己負担上限額を4万円に引き下げへ 70歳未満・年間所得300万円以下世帯(住民税非課税世帯除く)の負担上限を現行月額約8万円から引き下げ。2011年度にも実施か(9日読売夕刊)。
11日 菅副総理が国債発行抑制発言 「(2010年度当初予算の)44兆3000億円を超えないよう、全力を挙げて努力する必要がある」「これまで以上にソブリンリスクが注目され、市場が敏感に反応しやすくなっている」(閣議後記者会見)。
13日 民主党マニフェスト企画委が消費増税明記で基本合意 次期総選挙後の消費税上げを明記することで、4年間は上げないという鳩山首相の公約を生かしつつ、財政健全化に取り組む姿勢を前面に出す。
14日 B型肝炎訴訟で和解協議入り 国側が正式表明。責任範囲次第では、国の財政負担が兆円単位に上る可能性も排除できないという。
17日 家畜伝染病「口蹄疫」対策 予備費から100億~200億円を拠出へ(当初は1000億円と報じられた)。
18日 菅副総理が再び国債発行抑制発言 「44.3兆円もの新規国債発行を3年間続けていてマーケットが許すのか。相当しっかりしたメッセージを出さないと大丈夫とは言えないという心配を持っている」(衆院決算行政監視委員会)。
菅副総理が財政健全化法の提出作業はストップと明言 「政府の立場を超えて党の立場で、必ずしも十分に合意できていないものを出しても法案成立は難しいだろうとの指摘もあり、現時点では、国会に出す、出さないについても、はっきりした見通しは立っていない」(衆院決算行政監視委員会)。
長妻厚生労働相が子ども手当の半額現物給付に理解 「すべて現金か、一部を現物給付にするか、政務3役で検討する」「財政的な問題もある」と発言。従来よりも柔軟な姿勢に(閣議後記者会見)。
直嶋経済産業相が法人税率の早期5%引き下げに意欲 「産業構造ビジョン」骨子案が、企業の競争力回復を促し、海外流出を防ぐため、法人税率引き下げを提言。直嶋氏は2011年度の5%引き下げに意欲。

注: ○は債券相場に有利な材料、●は債券相場に不利な材料を示している。

出所: マスコミ各社報道をもとにみずほ証券金融市場調査部作成