発展途上国で出会う多くの中小企業経営者は元気だ。

 業績がついてくるかこないかは、その時々のビジネス環境やビジネスモデル、あるいは、運次第という面がある。しかし、生き抜くために全力を尽くす。ただ、それだけを考えていれば、自然と力も湧いてくる。それが元気の源なのかもしれない。

 1つのプロジェクトで特定の国・地域の中小企業(約20~30社)を短期間に集中的に訪問すると、どんなに経済発展が遅れた国・地域でも「中小企業(スモールビジネス)」は存在し、国・地域の経済・雇用を支えていると実感する。

 そこでは、それぞれの「中小企業経営」が営まれており、社会・文化やビジネス環境による違いもあるが、一方で共通する何かを感じる。ひょっとして、それは中小企業経営スピリットのようなものなのかもしれない。

 約5年前、アフリカの中小企業経営者(ウガンダ・タンザニアで計26人)に経営・財務に関するインタビュー調査を行ったが、その際、改めてスモールビジネスの原点を感じた。

 会社の売り上げは業界全体の市場規模の増減に必ずしも連動するわけではないが、景気が低迷して自社の売り上げが落ち込むと、ついつい景気のせいにしてしまうのが人情だ。

 しかし、アフリカの中小企業経営者は、気にする統計や景気指標もなく、他社のことなどどうでもいいように見えた。とにかくハングリー精神を持って向上しようとしていた。

 今の日本も、世の中や経済情勢を精緻に分析して憂鬱になるより、そうしたシンプルなマインドだけが必要なのではないだろうか。

 本稿では、タンザニアとウガンダで出会った中小企業経営者(計26人)へのインタビューを通じて理解した、現地の中小企業政策やビジネス環境とそこで生きるスモールビジネスについてお伝えしたい。

タンザニア、緒に就いたばかりの中小企業政策

タンザニア経済の中心で、事実上の首都機能を有するダルエスサラーム(ウィキペディアより)

 タンザニアは、社会主義システム(1967~1985年)の終焉以来、政治的安定を維持しており、近年、経済は高成長を示しており、2010年の成長率は7%を記録した。

 ただし、4484万人という人口で、1人当たり国民総所得530ドル(2010年、出所:世銀)という制約から、国内市場規模は依然として限定的だ。

 タンザニアでは、2003年4月に「中小企業振興政策」が策定された。この政策は具体的な政策目標、行動計画、実施関係機関を明記したものだ。

 さらに、2004年策定の「貧困削減戦略(NSGRP)」では、「成長を通じた貧困削減」が1つの柱とされた。そこには中小企業セクターに対する支援が必要不可欠と明記され、中小企業支援策も提示された。

 しかし、現実には、中央政府や国際援助機関は「国家貧困削減戦略ペーパー(PRSP)」に基づき、教育、水、エイズ等の基礎分野を優先しており、中小企業対策には予算が十分には回らないようだ。