「カンボジアがコメ禁輸の解除に初名乗り、コメの国際相場に緩和の兆し」

 2010年5月27日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の2面に載ったこの記事は、当時急激に高騰していたコメの国際相場に少なからぬ影響を与えた。

 コメ国際流通価格の代表指標である「タイ白米100%ランクB」の輸出価格(FOB)は、2006年度には300米ドル/トン前半を推移していたが、2007年から急上昇を始め、2008年4月には1000米ドル/トンを突破。

 そのまさにピーク時、カンボジアが世界に浴びせた「冷やし玉」的アナウンスだった。

コメ国際価格推移(Worldwide Agricultural Policy Information Center, WAPICサイトより引用)
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 「国際指標であるタイ中級米FOB価格は、カンボジアの声明を受け1000米ドル/トン以下に下落・・・(中略)・・フン・セン首相は『禁輸解除は世界(のコメ受給)懸念の解消に役立つだろう』と述べている」(同 英FT紙)

 これに先立つ2010年4月、フン・セン首相は政府民間セクターフォーラムでコメ輸出ライセンスの廃止を表明。

 このライセンスは、2008年に食糧価格が急速に上昇し、食糧危機となりかけたときに導入されたもので、200トン以上のコメを輸出する際には許可を必要とする、という趣旨のものだった。

 4月の輸出ライセンス廃止表明、5月の禁輸解除表明の後、フン・セン首相は同年8月、コメ産業育成の包括的な国策「ライスポリシー」を打ち出した。

 「(2010年現在)年20万トンのコメ輸出量を、2015年に年100万トンにする」

 フン・セン首相は、自らが提唱した数値目標の下、灌漑や港湾の開発、金融システム整備、など農業改革に必要な幅広いインフラ改革を関係省庁に指示。 「ライスポリシー」を経済復興フェーズに突入した国造りの柱の1つとなる重要指針と位置づけた。