先日、カナダに出かける機会があった。
海外旅行に限ったことではないが、その地方の味に触れるのは楽しみの1つだ。筆者が出かけたのはバンクーバー。「スモークサーモン」が有名な地だ。観光客が入るような店では、どこでもスモークサーモンが並んでいた。肉料理も日本とは違い、香辛料が効果的に使われており、見た目にも美しい料理が多かった。
さて、肉料理にも魚料理にも、必ずといっていいほど付いてくるのが、ジャガイモだ。マッシュポテトにフライドポテト、それに塩茹でした可愛らしい小さなポテト。毎食、多すぎるほどの量が出てくるのだ。
ジャガイモを眺めながら、人間とジャガイモの関わりを考えてみようと思った。
毒性を克服してアンデスから世界へ
ジャガイモはトマトなどと同じナス科の植物で、花びらが5つに分かれているように見えるのが特徴。花の色は淡い紫色で美しい。
ジャガイモの原産地は南アメリカのアンデス高原で、紀元前から栽培されていたという。インカ帝国の時代にはすでに栽培されていたことになる。従来の研究では、インカ帝国で主食となる穀物はトウモロコシだったと考えられていたが、史跡の研究やインカ帝国の地理的・気候的な条件を考慮した多方面からの研究の結果、トウモロコシではなくジャガイモが栽培され、食べられていたのではないかと考えられるようになっている。
スペイン人が世界中に進出し、植民地を求めた大航海時代、ジャガイモはアンデスの地からスペインに持ち込まれた。スペインからどのようにしてヨーロッパ各国に伝えられたのかは、今もってよく分かっていない。
ヨーロッパでは当初、観賞用植物として利用されており、食料としてなかなか広まらなかった。その理由は、ジャガイモに含まれる毒性のためだ。
アンデスからヨーロッパに持ち帰る時、船の中で発芽したジャガイモを船員が食べ、中毒になってしまった。ジャガイモは暗いところに保管していても温度が高いと発芽してしまう。ジャガイモの若芽や緑色になった部分には、ソラニンという植物毒が含まれているのだ。