今年2月末、コロンビア革命軍(FARC)は、今後身代金目的で民間人誘拐をしない旨、ウェブサイト上で発表した。1960年代から反政府闘争を続けてきた左翼ゲリラFARCも、このところ相次いで幹部が殺害され弱体化が進んでいたのである。
コロンビアと言うと、こうした誘拐ビジネスをはじめとして、銃、麻薬がらみの凶悪犯罪が多発する国とのイメージが先行し、旅の行き先として考える人はあまりいないかもしれない。
世界一級の観光地、コロンビア
しかし実のところ、のんびり過ごせるカリブ海のビーチリゾートから文化的雰囲気抜群のスペイン・コロニアルの街並、そしてアンデスの山岳地帯やアマゾンへと続く熱帯雨林の豊かなる自然、と全く趣の異なった環境に恵まれ、コーヒーや果物も美味しい一級の観光地なのである。
エメラルドや金を産出し宝飾品を展示する博物館や販売店も数多くあるから、女性にとっての魅力も大きい。「美人の産地」としても有名なので男性の目も飽きさせない。
コロンビア美人シャキーラや、ラテン世界のスーパースター、フアネスといった世界的に知られる歌手も多数輩出している音楽の宝庫でもある。
そんな魅力溢れる地だから、これまでも欧米人観光客は少なからず訪れていた。
となれば治安は大丈夫のようにも思える。確かに近年、銃犯罪は減少傾向にあるのだが、それでも世界有数の発生件数であることに変わりはなく、ようやく米国と争うようになった、という程度にすぎない。
その米国では地域と時刻さえ間違えなければ大した問題は起こらないわけだが、夜間はもとより、まだ陽が高いうちでも自家用車や路線バスに乗った人々が襲われるのが誘拐ビジネス。
それなりの予防策を取っていても、やられる時はやられるわけで、完全に防ぐことは難しい。
南米の架空の国が舞台となった『プルーフ・オブ・ライフ』(2000)での誘拐シーンのように、山の一本道や袋小路で狙われてしまったら最後、逃げ場はないのである。近年、ソマリアの海賊が大きな問題となっているが、こちらは山賊のようなものだ。