エコノミスト誌を発行していることで知られる英国のザ・エコノミスト・グループは、世界各国で各界のトップや専門家を集めたエコノミスト・カンファレンス(Economist Conferences)を開催している。とりわけ金融関連のカンファレンスは各国の政治や経済運営に強い影響力を及ぼすこともある。
5月19日には東京でギリシャ危機や日本の財政危機などについて焦点を当てたベルウェザー・シリーズ(The Bellwether Series)―アジア太平洋における金融の未来像―と名づけられたカンファレンスを開催する。その開催に先立ち、ザ・エコノミスト・グループの日本・中国代表を務めるグラハム・デイビス氏に、世界経済の行方や討論の方向などを聞いた。
問 まずはベルウェザー・シリーズと名づけられたカンファレンスの由来と概要をお聞かせ下さい。
日本、中国マネージング・ディレクター。13年間の投資銀行勤務後、2002年に同グループ入社。英オックスフォード大学卒
(撮影:前田せいめい、以下同)
デイビス ベルウェザー・シリーズはエコノミスト・カンファレンスが主催する金融カンファレンスです。
これを起ち上げた理由としては、何より2年前の金融危機があります。あれ以来、金融諸問題の重要性が急速に高まっていますからね。今回設定した各トピックには、特にギリシャの現状が日本の金融界にどんな影響を及ぼすのかという問題意識が通底しています。
ベルウェザー・シリーズは昨年末、ニューヨークで「ボタンウッド(Buttonwood)」という名称でスタートしました。ボタンウッドとはその昔、ウォール街のトレーダーたちがその下に集まって議論を戦わせた木(アメリカスズカケノキ)のことで、エコノミスト誌の金融コラムの名前でもあります。
しかしアジア・太平洋地域の方々にはピンとこないでしょう。そこで名前を変え、指標や先導者を意味するベルウェザーとしたのです。
ただし、ボタンウッドのコンセプトはそのままです。金融界のリーダーたちを筆頭に、規制当局や銀行とそのクライアントなど金融セクターに携わる方々が一堂に会し、多彩なトピックについてハイレベルな議論を行う。このカンファレンスを開催する意義はそこにあります。
問 ギリシャ危機が日本に及ぼす影響には、日本でも関心が深くなっています。ギリシャ以上に財政赤字が積み上がっている日本では、ギリシャの危機を対岸の火事とは思えなくなっているからです。今回のテーマでは、日本についても焦点を当てるのでしょうか。
デイビス ええ。スポットを当てるのは日本政府の財政、そして金融セクターの効率性です。最近、この2つが絡み合ってきていますが、その絡み方が少々危ういように思えてなりません。そこで日本という大きな枠組みを念頭に、この問題を問い直したいと考えています。