2月の初めにロシアのインターネットで「プーチンなきロシア」と題された映像が流された。もしウラジーミル・プーチンがいなかったなら今後1年半でロシアに何が起こるかを、わずか1~2分で回している。(敬称略)
東シベリアは中国領に?
議会は解散、反体制派主導の臨時政府樹立、200以上の政党乱立、欧米からは「本物の民主主義」誕生などと評されるが、ロシアの核兵器は米国の管理下に置かれ、ガスプロムの社長には反体制派が就任する。
それだけにはとどまらない。民族主義の反乱、経済危機、ルーブル下落とハイパーインフレの到来、地方政府の連邦離脱、内戦、反体制派だったナヴァーリヌィの米国亡命、東シベリアは中国領に、ウラジオストクには日本の平和維持軍駐留、グルジアの対ロシア侵攻、そして2014年2月のソチ冬季オリンピックはグルジアが開催国へ・・・。
10億円以上も投じて対立候補の税務申告漏れや私生活を暴き合う、米国の大統領選での中傷合戦から見れば、「プーチンなきロシア」はメデイアを利用した選挙技法一般でまだ品がある方なのかもしれない。
その想像力たるや、前回紹介したロシアの作家I・エレンブルグも裸足で逃げ出すほどの無茶苦茶ではあるのだが・・・。
3月4日の大統領選に当たり、危機感を持ったプーチン陣営が流した作品であることは間違いない。反プーチン側も負けじとばかりに、やはりインターネットで国家資産簒奪の容疑で収監されたプーチンの画像を似非ニュースのナレーション付きで流す。
鉄格子の中に入ったプーチン
CGなのかそっくりさんなのかは分からないが、気まずそうな鉄格子の中のプーチンの表情が何ともリアルに見えてしまう。
画像ではブタ箱にぶち込まれても、直近の2月11~12日に行われた全ロ世論調査センター(VTsIOM)の調査結果では、プーチンの支持率は前回の53.3%から54.7%に上昇してきている。
このままいけば、メディアにはがっかりの結果だが、何とか第1回の投票で過半数を制して面目を保つことが叶う可能性が増してきた。
生真面目な彼らしく、プ-チンは1月半ばからこれまでに自らの政見と政策課題を6回に分けて別々のロシアの有力紙に論文の形で順次寄稿した。