全国銀行協会の杉山清次会長(みずほ銀行頭取)はJBpressとの新春インタビューに応じ、「個人的見解」としたうえで次のような考えを表明した。米国経済の現状については「金融バブルが個人消費を押し上げ、国内総生産(GDP)の7割を超えてしまうという、特異な状況が崩れたということではないか」と言明。その一方で、米国では住宅価格底打ちが景気回復の条件となり、株価は住宅価格の底打ちより少し早く、最短では今秋に回復基調へ転じる可能性を指摘し、2009年が「反転攻勢」の発射台になればよいとの期待感を表明した。 

 邦銀の経営に関しては「(相場下落時に資本を棄損する)株式の保有が欧米金融機関などと比較してまだ多過ぎる」と述べ、政策保有株式の削減を中長期的な課題に掲げた。また、メガバンクから中小金融機関、ゆうちょ銀行までひしめく金融界の再編をあり得るとしている。インタビュー内容の要旨は次の通り。

 JBpress 昨年起きた金融危機の背景をどう分析しているか。

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 杉山氏 当初はサブプライムローン問題とされていたが、個人消費がGDPの7割を超えるという、米国の特異な状況が崩れたということではないか。崩れた以上、縮小均衡を探るのであろうが、その方向性がはっきりせず、将来を見通せないという状態が続いている。

 ―今回の危機と日本のバブル崩壊は何が違うのか。

 杉山氏 基本的に異なる。日本のバブルはあくまでローン(銀行貸し出し)が原因。貸し出しをどんどん増やし、不動産などへ資金が流れ、資産価格が下落した結果、不良債権が膨らんだ。どの銀行の経営者もある時点で「不良債権処理を終えた」と考えたものの、実体経済の更なる悪化とともに不良債権が増えていった。しかし、それはあくまで日本の問題だから、国内で新しい方向性を出せばよかった。時間はかかり、かなりの負担を強いられたが、各方面の努力により何とか解決した。

 今回のサブプライム問題に起因する金融危機は米国内だけの問題ではなく、証券化商品を通じて世界全体に波及している。一種の金融バブルが米個人消費を押し上げ、国内総生産(GDP)の7割を超えてしまった。中国やインドなど新興国は米国の個人消費に支えられて輸出を増やしていたため、米国の危機で輸出が大きく減退し、新興国経済そのものも重大な影響を受けた。今や世界中が相当密接にリンクしている。当然、危機後の調整には相当な時間を要し、解決は日本のケースより難しくなるだろう。

 ―米経済は浪費型以前の姿に回帰するか。

 杉山氏 いや、あまりそのようには感じない。同じ失敗を犯さなければ良いのだが…。やはり、ある程度は経済規模を縮小してでも均衡する社会に持っていくべきではないかと思う。ただ、オバマ次期大統領がどう考えているかはよく分からない。今後の政策を注視したい。