核開発をめぐり西欧との対立が続くイラン。IAEA(国際原子力機関)査察団を今月中にも受け入れる姿勢を見せる一方で、1700万バレルもの石油が毎日通り抜けていく世界最大の油田地帯への出入口、ホルムズ海峡を封鎖するとの警告を発し、エネルギー市場に不安を与えている。

ホルムズ海峡の由来はゾロアスター教

アゼルバイジャン・バクーのゾロアスター教寺院

 このホルムズ海峡という名。人の名前から取られたものと思いきや、実は、ゾロアスター教の神の名前から取られたもの。

 冒頭、バクー(アゼルバイジャン)の荒涼たる油田をジェームズ・ボンドが走りぬけるシーンから始まる『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)にも登場していた寺院で燃え盛る炎のような「永遠の炎」を崇拝することから「拝火教」とも呼ばれるゾロアスター教は、かつてペルシャの国教だったものである。

 もちろん、炎のエネルギー源は天然ガスや石油。古くからこのあたりは化石燃料ゆかりの地だったのである。

 しかし、どうして中東にばかり石油が埋蔵されているのだろうか。その理由を知るには、石油そのものの起源を探ることが一番の近道のようだ。

 そこでまず、時を1億6000万年前、中生代ジュラ紀中頃まで遡ってみよう。

二酸化炭素が現在の4~5倍あった時代

 活発な地殻変動や火山活動のため、大気には現在の4~5倍もの二酸化炭素が漂っている。そうなると温室効果はかなりなものだ。海水温は上昇し、大量に蒸発した水分は強烈な酸性雨となって大地に打ちつけている。

 濁流となった河は地面をえぐり、大地の栄養分が運び込まれた海にはバクテリアや植物プランクトンが繁殖し海面を覆っている。

 通常、そんな海洋生物たちは死後海底へ落下していく過程で、さらなる深海で生活する生物に摂取されるものだが、酸素が現代よりずっと少ない海底には生物が存在していないため、そのまま堆積物となってしまっている。

 海水は500年から1000年のサイクルで深く沈み込み、深海に酸素供給を行っているのだが、それには沈み込みの場である南極北極に冷水があることが必須。海水温上昇のため氷もなくなった状況では、海底への酸素供給もままならないのである。