かつて日本は世界のスーパースターで、1979年には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本も出た。その頃、著者エズラ・ヴォーゲル氏にインタビューしたら、彼は笑って「あれはアメリカに対する皮肉なんですよ」と流暢な日本語で答えた。
ところがその後、日本はバブル崩壊でナンバーワンの座を転げ落ち、その処理に手間取って「失われた20年」などと言われ、誰も見向きもしなくなった。
日本の挫折は愚かな政治家の間違った経済政策によるもので、欧米の先進国には無関係だと思われていた。
日本のバブル崩壊の後を追う欧米経済
「しかし最近は風向きが変わった」と日本銀行の白川方明総裁は、1月10日にロンドンで行われた講演で皮肉まじりに語る。
過去数年間の米国、ユーロ圏、英国で起きてきたことを1990 年代以降の日本のバブル崩壊後の姿と比較すると、相違点よりも、類似点の方が圧倒的に多いというのが私の印象である。日本で過去起きたことは、日本特有の現象ではなかった。
例えば2008年の「リーマン・ショック」以降の欧米の実質GDP(国内総生産)を、日本の1990年のバブル崩壊以降の動きと比べてみると、下の図のようにかなり重なる。むしろ日本の方が落ち込みは浅い(98年にもう一度落ち込むが)。不動産価格や長期金利などを比較しても、今回の世界金融危機は日本のバブル崩壊とよく似ている。
「デレバレッジと経済成長 ――先進国は日本が過去に歩んだ『長く曲がりくねった道』を辿っていくのか?――」(日本銀行)より
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これは偶然ではない。日本は世界に先駆けて、大規模な過剰債務の削減(デレバレッジ)を経験したのだ。