前回、神社の屋根の上にある特徴的な「千木」と「鰹木」のお話をご紹介しました。千木については武将の兜なども引いてその容態を考えましたが、今回はもう1つの方、「カツオギ」に関連して考えてみたいのです。
そもそも「カツオ」なんて魚の名前が出ているのは、不思議な感じですね。
神社と言えば神様の住まいであるはず。その屋根の上に魚なんて変だ、と思うかもしれませんし、あるいは神社の屋根の上に乗せるくらい大事な魚だと考えることもできるかもしれません。
がいずれにしろ、カツオという魚が日本人にとって大変身近な食料であることは、疑う余地がないかと思います。
やや私事の余談めきますが、私の父方の郷里は佐賀の小城という所で、中途半端に古い家だったため、私が子供の頃は昔からの風習がいくつか残っていました。
この中で、お正月に「お屠蘇」と一緒に3つのものを食べるという、儀式のようなものがありました。その3つというのはカツオの「削りブシ」と「塩」と「コンプ」です。
いま、この原稿を打ちながら「そう言えば・・・」と思い出して書き足しているのですが、これ、いずれも海から取れるものばかりですね。
佐賀の伊東家では、盆の上に半紙を折った上に、この3つを小山に盛って「勝つウオ、地のシオ、ヨロコンブ」と言いながら手の上に取り、これをサカナにお屠蘇をいただくという習慣でした。
まあ、ごくごく限られた一部の風習かと思いますが、「勝つウオ」だなんて、こんな正月の縁起物にも出てくる「カツオ」、なるほど、神社の上に「カツオギ」があるのも、改めてうなずけるような気がします。
「カツオのタタキ」は何を叩く?
目には青葉 山ほととぎす 初鰹
よく知られた山口素堂(1642~1716)の初夏の一句、「初ガツオ」と言うと、何とも言えずすがすがしい「日本ならではの風物詩」という気がします。
カツオは群れて生活していますから、獲れるときは大漁になることもある。5月の漁村が喜びににぎわう様が目に見えるようです。
さてこの、ときによりドサっと獲れる「初鰹」。先ほどのカツオブシなど加工食品と違い、生で食べるカツオと言うと「カツオのたたき」の出番になるでしょう。