内向き傾向と言われる最近の日本人だが、グローバル化に対応した人材をどう育てていくのか。エコノミスト・カンファレンス『ジャパン・サミット2011』リポート3回目は、「グローバリゼーション:日本におけるヒューマン・キャピタル戦略」をテーマとしたセッションをお届けする。
パネリストは、テムザック代表取締役の高本陽一氏、モンベル代表の辰野勇氏、臨床教育研究所「虹」所長で法政大学教授の尾木直樹氏、政策研究大学院大学教授の黒川清氏、司会はエコノミスト誌東京支局長のヘンリー・トリックス氏。
いまだに「画一的」な人材を求める日本の労働環境
司会 このパネルディスカッションのために、私たちは日本国内の多国籍企業を対象とした、日本人従業員への「満足度調査」を行いました。
まずは調査を実施したEIU(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット)のデビッド・ラインから調査結果の報告を、次いで国内の外資系企業の代表として、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)・ジャパンの社長、フレデリコ・モンテイロ氏に、人材採用の実際についてコメントをいただきます。
ライン 今回の調査は、日本人従業員の中でも専門職など、よりランクの高い人に対する満足度を調べたものです。結果、特に企業への忠誠心、技術的スキルなどにおいて、おおむね高く評価されていることが分かりました。
しかし、問題も見つかりました。それは企業側が重視する資質については満足度が少々低いことです。リーダーシップ(32%)、マネジメント力(34%)、他国の同僚とのコラボレーション能力(40%)、イニシアチブ(36%)・・・という具合。独創性、語学力、国際的な経験などが不十分との指摘も目立ちます。
それでいて企業側は、それらを改善するための努力をあまりしていません。英語研修を行っている企業が57%にとどまることなどは象徴的でしょう。パネリストの皆さんには、こうした現状を念頭にお話しいただければと思います。
モンテイロ 日本的資質の良さは、物事を非常に細かいところまで見ること、そして一生懸命に働くことだと思います。
一方西欧型のそれは、一言で言えば起業家精神です。リーダーシップ、イニシアチブ、創造性を発揮し、リスクを取りながらよりレベルの高いものを模索する。私たちが絶えず考えているのは、両者をバランス良く組み合わせられないかということです。
BATジャパンでは、将来マネジメントポジションに就く人材を育てるためのマネジメント・トレーニー採用というものを行っています。日本国内だけでなく海外に留学している学生も採用の対象です。