エコノミスト・カンファレンス『ジャパン・サミット2011』リポート、第2回の今日は、「エネルギーの未来:新たな時代の到来か?」をテーマに行われた議論をお届けする。

 パネリストは、元経済産業省経済産業事務官の古賀茂明氏、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏、東京大学社会科学研究所博士研究員のポール・スカリス氏、司会はエコノミスト誌東京特派員のケネス・クキエ氏。

日本の電力需要は原発なしでもまかなえる!?

司会 原子力発電なしで、日本は十分なエネルギーを確保できるのでしょうか。

スカリス 最近発表された供給予備率を見て、ちょっと驚きました。電力需要全体に対する供給余力を示す数字なのですが、東電は今6%、原発の発電量が多い関西電力はマイナス5%、東北電力も九州電力もちょっとマイナスです。

 ほかはだいたい5~15%くらいのプラスなのですが、専門家によると20%以上じゃないと安心できないと言います。ほかの国と比べると相当危ないところに来ているんですね。

 日本の供給予備率は1980年代から下がってきていました。これには地方レベルの政治問題が絡んでいます。発電所を建設する際には単に環境問題だけでなく、その土地への補償をどうするかという問題があり、そこをクリアできないために建設が認められていないケースが非常に多いのです。

 そんな現状からすると、原発なしでエネルギーを自給するのは難しいでしょう。全国にある54基のうち、現在28基が止められていますが、今年の夏までにはこれらを稼働させざるをえない。

 感情的な反発があるでしょうが、経済界からの要請は無視できません。今後、野田政権にも各県の知事に対してもそうしたプレッシャーが強まるはずです。

環境エネルギー政策研究所所長、飯田哲也氏 (撮影: 前田せいめい、以下同)

飯田 私たちの研究所が出した結論から言えば、原発なしでも十分まかなえます。これは各電力会社が持つ個々の発電所ベースで分析した結果です。

 現在、止まっている原発は28基ではなく45基です。つまり9基しか動いていない。しかしこの9基を止めたとしても、この冬も夏になってもまったく問題ありません。なのに問題があるかのように言うのは、私に言わせれば都合のよい健忘症です。事実を無視した議論が多すぎる。

 なぜ政府の分析でも電力が足りないということになるのか。それはデマンドサイドマネジメントという発想がないからです。今年の夏、東京電力管内の消費電力量は、ピーク時も平均も去年より20%下がりました。気温が下がったわけじゃありません。需要者が電力消費を抑えた結果です。

 分散型電源の電力を取引できるマーケットを整備、活用するなど、政府はもっと上手にピークマネジメントを行う必要があります。この分野の政策にはきわめて問題が多いのですが、それでもどうにかなっている。つまり電力は十分足りているんです。