前回までは、地域再生に取り組む上で不可欠な「地域への誇りと愛着」や「地域コミュニティーの再生」について見てきました。
今回からは、どうすれば、地域の再生に向けた取り組みを、地域の雇用の創出や地域経済の活性化につなげていくことができるかを考えてみたいと思います。そのキーワードとなるのが「地域内循環型経済の構築」です。
「地域内循環型経済」とは、「地域内でモノや資金等が循環する地域経済」のことです。具体的には、「地域資源を積極的に活用するなど地域内調達率が高く、投資が地域内で繰り返し行われることにより雇用・所得が持続して生み出される経済」を指します。
従来型の公共投資と工場誘致の限界
これまで、地域の雇用の創出や経済の活性化を図るために採られてきた代表的な手法は公共投資と工場誘致です。
しかし、我が国の国および地方の長期債務残高は、2011(平成23)年度末には894兆円、GDP比189%にも達する見込みで、欧州経済危機の発端となったギリシャの財政事情よりもひどい状況です。日本はその公債の多くを日本人が国債を購入して支えていることから、欧米とは若干状況が異なってはいますが、その状況は相当厳しい状態にあると言わざるを得ません。
したがって、膨大な財政支出を伴う公共投資による地域経済活性化の手法を採ることが難しい状況にあります。
特に、景気浮揚のための安易な公共投資によって、全国各地で「箱物行政」と揶揄されるような、過大な施設の整備を結果として助長したとも言えなくありません。その結果、施設の維持に毎年巨額の維持コストが必要で施設の運営が赤字となり、地域財政を圧迫しているケースが全国各地で見受けられます。
国・自治体の財政が厳しくなる中、必要最小限の投資は認められるべきですが、フロー効果だけを狙った公共投資を続けることはもはや許されないと言えるでしょう。
また、工場誘致については、国際的な工場誘致競争が激しさを増す中、誘致したり、誘致した企業を引き留めたりするためには多額の補助金や投資が必要とされます。また、いったん地域内に立地したとしても、経済環境によっては域外に転出するかもしれないという恐れもあります。