先日、東京・大手町にあるマイクロソフトイノベーションセンターで開催されたセミナーで講師を務めた。午前中はサイボウズの青野慶久社長とパネルディスカッションを行い、午後は「お客様を発掘するマーケティング」について4時間かけて講義をした。
いろいろと講演や講義を頼まれるが、これほどの長丁場はない。途中でネタが尽きてしまい、グループディスカッションなどを行って急場をしのいだ。まるで大学の講義のようになってしまい、ちょっと申し訳ないことをした。
青野社長は、1997年に3人で会社を設立してから1部上場企業になるまでの経緯や裏話などについて話をされた。何とも魅力的な話をする社長である。IT業界についての「共通認識」も多く、驚いた。ひとまわり以上の年齢差があるにもかかわらず、である。
青野社長と私の共通認識の1つが、「経営者はブランド志向である」ということだ。加えて「ブランド志向は結局コストが高くつく」ということである。
先行する大ブランドのシェアを奪っていったサイボウズ
サイボウズは、「グループウエア」のソフト、サービスを提供する会社だ。会社を設立した当初は、IBMの「Lotus Notes」がグループウエアでは国内で約20%のシェアを持っていた。愛媛県松山市で創業した会社が国内トップシェアの「ブランド」となるまでには、並々ならぬ苦労があった。
まずは徹底的に、ターゲット層を洗い出した。ターゲット顧客層は中堅企業(社員数300名以下)に限定した。青野社長らは寝ても覚めても、ターゲット層にとって一番使いやすく役に立つグループウエアとは何か、使ってもらえるにはどうすればいいのかを考え続けた。そして、自社製品の優位性がどこにあるかを探求し、売り上げよりも利益よりも、「使ってくれる人の数」で勝負したという。
サイボウズのマーケティング戦略は、徹底的に利用者の立場に立ったものである。そもそもマーケティングとは何か。平たく言うと「売れる仕組み」をどのようにして作り出すかに尽きる。
マーケティング戦略を立てる際の切り口として、よく「4P」という言葉が使われる。皆さんご存じのように、「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」を意味する。