米核態勢見直し、歓迎する日本・アジアの裏事情

広島の原爆ドーム〔AFPBB News

 米国アジア研究所(The National Bureau of Asian Research)が、2009年11月に「日米同盟、期待感の不一致にどう対処すべきか(Managing Unmet Expectations in the U.S.-Japan Alliances)」というショッキングな報告を行った。日本語訳は『同盟が消える日 米国発衝撃報告』(ウェッジ刊)。

 この報告の内容を手短にまとめると次のようになる。

 「日米双方は、同盟は大切だと言い強化の名目で小修正を繰り返してきたが、相手の期待感に十分適合できず双方に不満がたまっている。このため、日米は、同盟が唯一の選択肢でも手段でもないという冷厳な前提を認めるべきである」

 「そのうえで、同盟の持続が最良の選択肢であると再確認して日本の防衛という同盟の核心部分に焦点を当て、双方の期待感に真に適合できるところまで範囲を縮小すべきである」

 報告書を取りまとめたのは同研究所の上級研究員で、ジョージ・ブッシュ政権下で北東アジア担当の国防次官補だったマイケル・フィネガン氏。同じくブッシュ政権下で国防次官補だったリチャード・ローレスと元国防次官補代理のジム・トーマスが報告の前書を担当、日本の外務省や防衛省関係者も参加して有事シナリオを分析したうえでの提言だから、かなり迫力がある。日本は痛いところを突かれた形の報告書だ。

 日米安全保障条約が改定されて50年目を迎え、鳩山由紀夫政権が米軍再編問題で難渋を極めている今こそ、この提言を振り返る意味は大きい。

日米同盟とは

 日米同盟(以下、同盟と言う)とは、昭和35年(1960年)に成立した「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」に基づく同盟を言う。

 この条約は、全10条からなり、前文で平和友好、民主主義の擁護、経済協力、国連憲章の尊重、個別的・集団的自衛権の保有、極東の平和と安全維持のための条約締結を謳っている。

 各条では、国連重視(第1条)、平和的・友好的な国際関係発展の協力と経済協力促進(第2条)、武力攻撃対処能力の維持・発展(第3条)、平和と安全のための随時協議(第4条)、日本防衛のための共同対処(第5条)、在日米軍の駐留と地位協定(第6条)、国連憲章の範囲内の行動(第7条)、批准(第8条)、旧条約(サンフランシスコ講和条約)の失効(第9条)と有効期限(国連の効力発揮までの時限効力と、10年後の事前破棄通告による失効)(第10条)を述べている。

 内容は、安全保障に限らず、価値観・経済も含むが、価値観や経済が包括的な表現にとどまる一方で、第5条と第6条が日本の防衛および在日米軍の駐留と地位協定に具体的な根拠を与えており、一般に「安保条約」と言われるゆえんがそこにある。

 しかし、当時(1981年)の鈴木善幸首相が「同盟に軍事的側面は含まない」と公式訪問先の米国で発言し大反発を受けたように、日本社会にはそう思いたくない雰囲気も存在した。