財界総本山・日本経団連に代わり精鋭企業集団による「第2経団連」構想が財界内で話題を集めている。その裏側には政治とカネの問題にからむ諸事情があるようで・・・。(文中敬称略)

民主党の財界人脈の乏しさが露呈

 日本航空の再建問題が大詰めを迎えていた2009年末の話である。

 「日航に巨額の公的資金を投入するのと引き替えに現行の経営陣は総退陣する。新しいCEO(最高経営責任者)には外部の経済人を抜擢するそうだ」──こんな情報を耳にした国土交通省詰めの記者たちは色めきたった。「いったい誰だ?」「決定権があるのは前原誠司国交相だな」「小沢には必ず相談するよね」

 キーマンはすぐに浮かんだ。京セラ名誉会長の稲盛和夫である。鹿児島出身だが現在は京都に自宅を構える稲盛は、京都選出の前原の有力後援者で、松下政経塾の優等生だった前原をことのほかかわいがっている。また稲盛は行政刷新会議のメンバーとして小沢一郎民主党幹事長とも親しい。

日航の救世主となるか、稲盛氏の横顔

他に頼める人がいなかった? 〔AFPBB News

 稲盛は中小企業の若手経営者を育成する勉強会「盛和塾」を主催していて、全国に5000人を超す “信者” がいる。「この中の有力者が抜擢されるのではないか」「いや、航空業界のトップは素人には務まらない。運輸業界に詳しい人がいいという情報もある」「日航には8つも労働組合があるぞ。社内をまとめるには労務に精通している経営者がふさわしいのではないか」

 これらの条件に合う人物として、細谷英二りそなホールディングス会長(旧国鉄出身)、村山敦関西空港前社長(松下電器産業=現パナソニック=出身)、矢野弘典中日本高速道路会長(東芝出身)らの名が舞台裏で浮かんでは消え、そのたび担当記者は周辺取材に追われた。

 しかし──。蓋を開けてみれば日航CEOに就任したのは他でもない稲盛御大だった。稲盛のCEO就任を報じる記事をまとめながら、大手全国紙の経済部デスクはつぶやいた。「結局、民主党には稲盛和夫以外に頼みにする経済人がいないってことか」

新応援団募集構想

 年が明け、桜の開花宣言がちらほら出る頃になって、財界雀の間から誰ともなく「第2経団連構想」が囁かれるようになった。